定年後「自分の居場所がない」と嘆く人の深層心理 「居場所より出場所」を作るという新たな視点

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居場所があることの安心は否定しません。しかし、居場所さえあれば人間は生きていけるのかといえばそうではない。毎日、部屋に閉じこもってテレビやゲームだけしていればいいと思う人もいるかもしれないが、最初のうちは快適でも、それが長く続けばどうでしょう。

それは、テレビやゲームの完備された刑務所と同じではないだろうか。居場所とともに自分の役割が感じられなければ人間は腐ります。FIREした人たちが、お金も居場所もあるのに、退屈すぎてまた働きたくなるのもそういうことでしょう。

「出場所」があるとまず人間はその場所まで出ていくという行動が必要になります。明確な目的がなかったとしてもそこに行くという行動を先にすることで、人間はちょっとだけ前向きになっているものなのです。

「やる気がないから行動しないのではない。行動しないからやる気が出ない」と言われるのはまさにその通りで、人間は意志の力で動いているのではありません。動くから意志が後付けされるのです。

「出場所」は場所に限らない

「出場所」と表現していますが、これは場所には限りません。散歩という行動も1つの「出場所」になりますし、本を読むという行動もそうです。その際、できれば、自宅で本を読むより、ファミレスやカフェや公園など、どこかいつもの居場所と違う場所に「出かける」ことで、より一層「出場所」感が増すと思います。

同様に、映画館で映画を観ることも、コンサートやライブ、寄席などに行くことも「出場所」になります。特定の継続性のあるソリッドな居場所じゃければ安心できないという固定観念を取っ払うと、行動そのものが「出場所」となりえるのです。

当然、「人と会う、人と話す」という行動も「出場所」になる。その相手は必ずしも友達である必要はありません。もちろん、友達でもいいのですが、それより、むしろ全く知らない赤の他人との刹那のつながりが結果として自分に刺激をもたらす場合も多いし、知らない相手だからこそ気軽に話ができる場合もあります。

友達がいなくても、趣味などなくても、誰かと接続する機会は案外たくさんあります。一人旅をしてみることもおすすめしています。極論すれば家に居場所がなくても、たくさんの「出場所」を確保できればなんとかなるものです。

どこかのコミュニティに所属することでの安心な居場所を求めることだけに固執するのではなく、接続点を多く持ち、まず自分自身の「出場所」を作っていく。

その「出場所」において、誰かと出会ったり、何かと触れ合うことが、結果的に自分自身の内面に安心な別のコミュニティを次々と築いていくことにつながります。行動した分だけ地層のようにそれは自分の内面に積み重なっていくのです。

居場所ではなく、「出場所」を作る。こういう視点はいかがでしょうか。

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荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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