長野の温泉街に「スナック80軒集積」陥る三重苦 「昭和好き」の女性や若者たちを取り込む施策も
戸倉上山田商工会の飲食部会に所属するスナックは10年で3分の2に減った。温泉街の衰退、会社の人間関係の変化、そしてコロナ禍……三重苦に直面し、温泉街のスナックは瀬戸際に立っている。
「廃業していなくても、ママが昼働きに出るようになって、不定期営業になっているスナックも少なくない」
そう話すのは信州千曲観光局の山崎哲也さん(42)だ。上山田温泉エリアで生まれ育った山崎さんにとって、スナックは常に身近な存在だった。
「ちびくろ&らぶの大ママは小学校の同級生のお母さん。成人式の2次会もスナックだったし、地元の人にとってはよその地域の居酒屋のような存在ですね」
大学を卒業し上山田町役場(後に合併し千曲市)に就職した際は、職場の先輩から「自分のスナックを1軒持っといたほうがいいよ」と助言されたという。
少しずつ色あせながらも、地域に根付いているネオン街。それを観光資源として磨きなおせないかと考えたのは、観光局のワーケーション事業で首都圏からやって来た人たちが「スナックが多いね」「昭和だね」と真っ先に興味を持つのを見たからだ。
「新しいものを作ってもどこかの真似になってしまう。今あるものを活用するしかないと考えている中で、上山田で一番とがっているものはスナックだろうと行きついた」
女性や昭和好きの若者を取り込みたい
「おじさんのたまり場」というイメージのスナックを、女性や昭和好きの若者が気軽に入れる場所に転換すべく、ワーケーション参加者の協力を得ながら、店舗情報を発信する公式サイトの開設、女性向けのスイーツやノンアルコールメニューの充実、都内でのスナック講座といった取り組みを策定。地域独自の観光資源を活用した看板商品の創出に補助金を出す観光庁の事業に採択され、今秋プロジェクトを始動した。
11月下旬に実施したモニターツアーは、観光局のスタッフらが参加者を先導し、雰囲気の違う3軒を巡った。参加者はスナックで楽しむ様子やメニューを撮影し、SNSで発信した。うち1軒は「観光局の人たちが自分たちを気に掛けてくれる気持ちが何よりうれしい。スナックの経営者はあまり情報交換したりはしないけど、今後どうすればいいんだろうという悩みは皆あると思う」と感謝する。
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