長野の温泉街に「スナック80軒集積」陥る三重苦 「昭和好き」の女性や若者たちを取り込む施策も

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「東京ドームを40万円で借りて草野球をしたこともある。お店が20万円、お客さんが1人1万円出した。今思えば店も客も景気がよかったわね」

当時20歳の駆け出しのホステスで、今は大ママと一緒に店を切り盛りするちいままの美(よしみ)さんは、「信じてもらえないかもしれないけど、上山田は人にぶつからずに歩けないほどのにぎわいだったのよ」と回想した。

バブル崩壊後の衰退、コロナ禍で決定的に

キャバレーやスナックのネオンが一晩中街を照らしていた温泉街は、バブル崩壊後に衰退していく。

まず、個人旅行へのシフトの中で、団体客中心だった戸倉上山田温泉の旅館が低迷、名物的存在だったロック座も2007年に閉館した。

近年は別の「変化」にものみ込まれた。ママたちは「上司が部下を連れてくる流れが断ち切られ、スナックが入りにくい場所になってしまった」と嘆く。

SNSの普及を背景に、飲食店は店の公式サイトをつくって、メニューと価格を表示し、レビューサイトで評価を受けるのが当たり前になったが、スナックは後輩や部下を連れてきて、作法を教えてくれる常連がいたから、時代に対応しなくても成り立つことができていた。しかし、2010年代以降は若者が会社の飲み会を敬遠するようになり、客の高齢化と固定化が進んだ。

スナックが集まる「ほろよい銀座」(写真:筆者提供)

そして3年続くコロナ禍で、ネオン街の苦境は決定的になった。千曲市によるとピーク時の1976年に130万人を超えた戸倉上山田温泉の来訪者は、2020年に約30万人に激減、2021年も約35万人と低迷した。宴会需要が消え、前身の団体から数えると100年近い歴史を持つ芸妓の組合「上山田戸倉温泉芸寮協同組合」も2021年に解散した。

今年に入ってからは全国旅行支援など国の観光業支援政策で旅行客が戻ってきたものの、密を避けて旅館で過ごすスタイルが定着し、スナックは取り残された。ちあーずのまさえママは「休業補償がある頃は思い切って店を閉められたけど、今は休むと売り上げがなくなる。だから休むにも休めない」と明かす。

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