日本人が愛した「ジャニーズの名曲」変遷の軌跡 時代と共に読み解く「光GENJI」「嵐」「Snow Man」

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王道の王子路線に対し、昭和の価値観をギンギラギンに感じるのが「近藤真彦」の楽曲だ。特に『ギンギラギンにさりげなく』は名曲。「ギラギラ」でも「キラキラ」でもなく「ギンギラギン」。作詞は伊達歩(作家・伊集院静のペンネーム)で、「覚めた仕草熱く見ろ」「笑い」「革ジャンバンダナ」「ギンギラギンさりげなく」といった言葉の対比により、裏腹な少年心が伝わってくる。

この曲の他にも、「一番」「ケジメ」など、彼の歌世界は白か黒か、テッペンかどん底かの二極化だ。バイクで走り出したり、バカヤローと叫んだり、漂うのはひたすら「男の美学」と呼ばれがちなもの。恋愛の関係性も「君と僕」ではなく「俺とお前」。現代ではなかなか見られなくなった“オレオレヤンチャ思考”は、改めて聴くと新鮮だ。

平成のジャニーズソングで、この「ギンギラギン」に通ずる、いきり立つ若さを感じるのが、「ギリギリでいつも生きていたいから」と歌う「KAT-TUN」のデビュー曲『Real Face』(2006年)。作詞はスガシカオ。

2021年の紅白歌合戦から、3人の『Real Face』を聞く機会が増えたが、若かりしヒリヒリ感とは違う、鍛錬された鋼のような趣きがある。令和もなかなか“ギリギリな時代”。この曲みたいにジャックナイフのような作品がまた生まれるかもしれない。ギンギラギン、ギリギリの次は何が来るだろうか。

『スシ食いねぇ!』という音楽実験

1982年にデビューした「シブがき隊」も、昭和のアイドルソングの革命児。「ゾッコン」(『Zokkon命』)、「ベッピン」(『Hey! Bep-pin』)、「アッパレ」(『アッパレ! フジヤマ』)など、ディスコグラフィはアイドルらしからぬ死語やダジャレのオンパレードである。まさに“和の言葉遊び”の洪水!

「花の82年組」と呼ばれたアイドル全盛期、なによりユニークさが重要視された時代ならではの“遊び”感。森雪之丞や三浦徳子などの言葉の匠たちが、思いきり楽しんだ作詞を実験している、“神々の遊び”を聴いているようで、最高に心浮き立つ。

この言葉遊びと和の世界観を進化させ、彼らは1986年に『スシ食いねぇ!』という未知のジャンルに到達する。アイドルが日本の食文化に特化して歌うという突飛な挑戦は、世間の度肝を抜いた。そして見事に歌謡史に爪痕を残している。今でも寿司売り場などで大人気だ。

彼らが成功させたこの“和の祭り路線”は、以降、ジャニーズソングの柱の一つになった。1990年には「忍者」が、美空ひばりの名曲とアクロバットを融合した『お祭り忍者』で斬新なパフォーマンスを魅せてくれた。2004年には「関ジャニ∞」が浪速という地域色を入れ込んだ『浪花いろは節』を発表。現在も、関西ジャニーズ勢が“祭り路線”を継承し、元気に日本を盛り上げてくれている。

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