人は「挫折、貧乏、失敗」の告白に共感する 人生の節目に贈る5つのベストスピーチ

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最後は、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスのプリンストン大学でのスピーチ(2010年)をご紹介しよう。

彼はテキサスの祖父母の牧場で過ごした少年時代の思い出を振り返る。祖母に対して、自分の賢さをひけらかそうと言った一言が彼女を傷つけ、泣かせてしまった。祖父は少年にこう言う。「お前もいつか分かる。賢くいるより寛容でいるほうが難しいのだ」。そこで、彼は与えられた才能に溺れ、間違った選択をする愚かさに気づかされる。結局、人生は才能ではなく、どんな選択を自分がするのか、ということなのだ、と。「挑戦しないという選択を一生、後悔して終わりたくない」と安定した金融の仕事を捨てて、不確かなネットビジネスに乗り出した。その後の輝かしい成功は誰もが知るところだ。

共感を促す脳内物質オキシトシンの分泌を刺激

なぜ、人の挫折や失敗の話に引き込まれるのだろうか。それは、人は困難を乗り越える「ストーリー」が大好きだからだ。ディズニーの映画やどんなアクション映画も、ヒーローやヒロインが挫折やチャレンジを乗り越えて、ハッピーエンドというパターンだ。「谷」がなければ、「山」場は作れない。

脳神経経済学者のポール・ザックによれば、貧困や挫折などの苦境を目の当たりにしたり、聞いたりする時の緊張感は、共感を促す脳内物質オキシトシンの分泌を刺激するのだという。さらに、主人公への共感が、自分も何かしてあげたいという手を差し伸べようとする気持ちにつながるのだそうだ。

ちなみに、このオキシトシンは「恋愛ホルモン」、「癒しホルモン」とも言われ、人とのつながりを求めるホルモンだとか。ソーシャルメディアの利用もこのオキシトシンの分泌を高めるとの調査もある。

fMRIを使った別の調査では、事実ベースの話を聞いた時には脳の聴覚皮質や視覚野のみが刺激されるのに対し、主人公が困難にあうストーリーを聞いた時は脳のもっと多くの部分が刺激されたという結果が出ている。

そういえば、結構強がりで弱みを見せない筆者も、ある時、前の会社の後輩社員に「昔、自分が本当にブスで自信がなくて、それでも負けたくなくて、必死で勉強した」といった話をしたことがあった。その会社を辞める時、彼に、「あの話を聞いてとっても感動したんです」と言われてびっくりした。自分でそんな話をしたことも忘れていたぐらいだったが、人は「弱み」を打ち明けられた時、逆に信頼感を抱くのかもしれない、とふと、感じた瞬間だった。

皆さんも部下や好きな人に自分の成功話ばかりをアピールするのではなく、挫折や苦労などを〝告白″してみてはいかがだろう。見えない壁に穴が開き、新たな絆が生まれるはずだ。

さて、今回の黄金律は・・・・。ご紹介したスピーチが、黄金律そのものといえる。YouTubeの映像は、サンドバーグのもの以外は、日本語の字幕が付いているので英語が苦手な人にとっても、必見である。時間がある時に、ゆっくりと噛みしめていただきたい。

岡本 純子 コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師

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おかもと じゅんこ / Junko Okamoto

「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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