近鉄奈良線を半世紀支えた「旧生駒トンネル」の今 社運かけ大工事、1914年当時「複線で日本最長」

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戦後、輸送力増強に対応するため、1964年に南側に並行して新生駒トンネルが開通。半世紀にわたって奈良線を支えてきた旧生駒トンネルは役目を終えた。 現在は東側が1986年に開業したけいはんな線(当時は東大阪線)の生駒トンネルの一部になっている。

奈良線の新生駒トンネルからの避難路が7カ所設けられていて乗務員の訓練にも使用される。2009年、経済産業省から近代化産業遺産に認定された。2010年の創業100周年など、これまでに内部の見学ツアーを複数回実施している。

2022年11月12日、旧生駒トンネルは従来とは一味違った活用がされた。トンネルの入り口から330m付近にステージを設置、大阪芸術大学の学生によるブラスオーケストラの演奏会を開催した。

旧生駒トンネル内でのコンサート
大阪芸術大学の学生による演奏会(記者撮影)

トンネル内のコンサート

大阪芸大とは2022年3月、観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」の車内でフルート三重奏が楽しめるコンサート列車を走らせており、コラボ企画は2回目。出演するのは普段はベートーヴェンやブラームスといったクラシック音楽を学ぶ学生たち。トンネル内は湿度が高いため、木管楽器に適しておらず、ブラスオーケストラの演奏会とした。残響は4秒ほどあるという。

ヴェルディの「アイーダ」大行進曲から、久石譲の「となりのトトロ」メドレー、あいみょんの「マリーゴールド」まで、親しみやすい楽曲を約1時間にわたって披露した。指揮を担当した大阪芸大演奏学科の西田和久教授は終了後「残響が長く、聴こえ方が一般的なホールとは全然違うので余計に気を使った。ゲネプロ(最終リハーサル)では普段と違ってばらけて聴こえる部分があり、それらをいちいち修正して本番を迎えた」と胸をなで下ろしていた。

近鉄は12月、近鉄奈良駅に「奈良公園前」の副駅名を付け、子鹿のイラストを描いた駅名標にするほか、神戸三宮との間でラッピング列車「ならしかトレイン」の運行を開始。またダイヤ改正により観光特急「あをによし」の京都―奈良間の運行を1往復増発するなど、奈良の観光需要掘り起こしを加速する。

大阪から奈良へ歴史探訪に出かける際には、電車内で旧生駒トンネルにも思いを馳せてみると旅の深みが増しそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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