特にニッケル・カドミウム二次電池は供給元が実質上1社に限られる状態が続いたことから、マキタ電機製作所が早々にニッケル・カドミウム二次電池を採用して電気ドリルのコードレス化を実現したのは、日立工機が電池の供給を受けにくい立場にあることを見越したうえのことと考えられる。
マニラボール塗工紙のケースでは、大昭和製紙が長年放置してきた公害問題を解消するための投資を強く迫られるに至ったことが契機となっている。これは内生的な変化の一例である。
第一次石油ショックの渦中、北越製紙が社運を賭した設備投資を敢行し大昭和製紙を突き放したのは、大昭和製紙が公害対策以外の目的に設備投資を振り向けることが財務的にも社会的にも難しいことを見越しての判断であったに違いない。
大昭和製紙が身動きの取れない期間に、北越製紙はマニラボール塗工紙事業で盤石の体制を整備して、新たな盟主に躍り出ている。
応戦しないことが合理的な状況をつくる
競合を凍結する、または金縛りにする戦略は、好機を捉えて打つ必要がある。そのためタイミングを選ぶ自由は著しく限定されてしまう。凍結を意図しない場合も、意図する場合も、その点は同じである。
時機を捉えて動くことは戦略の一般則として重要ながら、なかでも構えの変更は時機を捉えない限り成り立たない。それゆえ時機の読解が本質的に重要となる。
やっと自分がしかるべきポジションに就任して「さて、いよいよ」と力んでも、そのタイミングで競合凍結を狙えるかどうかはわからないという点は心得ておいたほうがよさそうである。
狙い打ちの競合凍結は、マイケル・ポーターを始祖とする競争戦略論の中核的な概念である。ゲーム論の言葉に置き換えるなら、これは競合にとって応戦しないことが合理的となるような均衡点、もしくは攻め口やタイミングを選ぶことに等しい。
競合をフリーズまたは金縛り状態に追い込んで逆転するのはエレガントな勝ち方であり、これこそ戦略のなかの戦略と考えたくなるのも無理はない。
しかしながら、本節で小が大を食うパターンが浮かび上がっているところを見ればわかるように、この戦略を使えるのは、しがらみの少ない専業メーカーに限られる。
弱者の戦略と見れば痛快ではあるが、万能とは言い難い。しかも、攻め口やタイミングの選択を間違えると自爆に追い込まれることもあるので、その意味においても使い手を選ぶ戦略である点には留意していただきたい。
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