成長市場で、構えを活かして逆転を狙う方々は、息の長い長期戦を覚悟したほうがよい。積年の劣勢を跳ね返すには往々にして自社の力だけでは難しいため、時機の勢いを借りる必要がある。
しかしながら、時機が到来するタイミングは制御できないため、焦ってはいけない。ひたすら時機の到来を待ち、兆候を掴んだ瞬間に、誰よりも早く機敏に反応する。それが、ここでの勝ち方となっている。
このパターンにとって障害となるのが、人事である。年功序列への反動で評価や報酬を単年度業績に連動させる企業は増える一方ながら、成果主義に傾き過ぎると事業経営責任者を短期志向に駆り立ててしまう。
次に取り上げるのは、「狙い打ちの競合凍結」で首位逆転を果たした5ケースである。
電気ドリル(マキタ電機製作所が日立工機を逆転、1984年)
マニラボール塗工紙(北越製紙が大昭和製紙を逆転、1980年)
水中ポンプ(鶴見製作所が荏原製作所を逆転、1993年)
針状ころ軸受(日本精工がNTN東洋ベアリングを逆転、1984年)
ダイカストマシン(宇部興産が東芝機械を逆転、1988年)
*年は、首位交代が起きた年を指す
狙い打ちの競合凍結は、逆転する側が競合の弱点を見据えたうえで仕掛け方を選ぶパターンである。
競合の弱点を突く発想
ここで契機となる変化は、外生的な場合もあれば、逆転される側が内生的に自ら生み出す場合もある。重要なのは、あくまでも競合の弱点を突く発想である。
象徴的なのは電気ドリルのケースで、ここでは容量の大きいニッケル・カドミウム二次電池の登場が契機となっている。これは電動工具業界の外で起きた技術革新であり、外生的な変化の一例と言ってよい。
日立工機は、電池メーカーを抱える企業グループのメンバーで、間接的に電池メーカー各社とは競合関係にあった。
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