所得が低い家の子どもから発明家が出にくい理由 両親の所得が子のイノベーション力を左右する

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アメリカでも、それよりずっと平等なフィンランドでも、J字曲線が見られるのはなぜだろうか。

親の所得が潤沢だと、発明の障害物を乗り越えやすい?

アメリカのJ字曲線の原因としてすぐに思い浮かぶのは次の2つである。

第1に、両親の所得は、長じてイノベーションを生み出すような学力や興味の方向性などの形で幼少期の子供の能力に影響を及ぼす。

第2に、両親の所得が潤沢であれば、発明家への道に立ちはだかるさまざまな障害物を乗り越えやすい。

発明家になる確率を、小学校3年次における標準数学テストのスコアとの関係で示してみた(図4)。

(出所:フィリップ・アギヨンほか『創造的破壊の力』)

ベージュの線は両親の所得が最上位20%に入る家庭の子供、青の線はそれ以外の子供を表す。すると、いずれの線も程度は違うもののJ字曲線を描くことがわかる。

3年生のときの数学的能力が並み(平均前後)の場合、発明家になる確率はどちらも低い。

ところが平均を大幅に超えると(90パーセンタイルの点線の右側)、確率はぐっと高まる。しかもここで、ベージュの線と青の線の開きが顕著になる。

つまり能力の高い子供の場合、両親の所得が多いほど発明家になる確率が大幅に高まるのである。

並みの能力の場合には、所得の差はさしたる確率の差につながらない。

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