所得が低い家の子どもから発明家が出にくい理由 両親の所得が子のイノベーション力を左右する
経済成長論の権威であり、フランスをはじめ、世界最高峰の大学で教鞭をとるアギヨン教授が行った連続講義をまとめた書『創造的破壊の力:資本主義を改革する22世紀の国富論』の邦訳がついに出版された。
20世紀の偉大な経済学者シュンペーターが提唱した「創造的破壊」をベースに資本主義の未来を語る本書から、親の所得と子どもが発明家になる確率の関係について、抜粋、編集してお届けする。
20世紀の偉大な経済学者シュンペーターが提唱した「創造的破壊」をベースに資本主義の未来を語る本書から、親の所得と子どもが発明家になる確率の関係について、抜粋、編集してお届けする。
子が発明家になる確率と親の所得の関係
発明家になる確率は、社会的・家庭的要因にどの程度影響されるのだろうか。
この点に関するアレクサンダー・ベルらの研究成果を紹介しよう(この研究では、「発明家」とは「生涯にすくなくとも1回は特許を取る人」と定義する。イノベーションの一般的なイメージからするとだいぶ限定的な定義であることをお断りしておく)。
1996~2012年に米国特許商標庁(USPTO)に1回以上特許を出願したアメリカ人の数と、両親の所得との関係を図1に示した。
両親の所得はすくないほうから順に100グループ(百分位)に分けて横軸に並べてある。百分位階級ごとに特許出願経験者の数をプロットしていくと、図のようなJ字型の曲線になった。図からわかるように、所得がすくないほど出願者数もすくなく、また増え方も小さい。
ところが百分位階級の半分を過ぎたあたりから出願者数は顕著に増え始め、とくに最上位20%になると大幅増となる。
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