所得が低い家の子どもから発明家が出にくい理由 両親の所得が子のイノベーション力を左右する
以上を総括すると、発明家になるには幼少期の能力が重要であるが、幼少期に能力の高い子供の場合、両親の所得が多いほうがぐんと有利になると言える。
発明家への道のりに立ち塞がる社会的要因
幼少時の能力と家庭環境それぞれの影響を切り分けるために、ベルらはまず調査対象の子供たちを所得の上位20%と残り80%の2つのグループに分けた。
そのうえで、各グループ内では標準数学テストの成績は均等分布していると仮定する。別の言い方をすれば、社会的要因は3年生のときの学力に何ら影響を与えないと仮定したわけである。
この仮定では、2グループ間の確率格差の3分の2以上(68.8%)に説明がつかなかった。つまり、68.8%は社会的要因によるということになる。もともとこの要因をゼロとする仮定は行きすぎだったことに注意されたい。
68.8%という数字は最小値であり、子供が発明家になる確率に及ぼす社会的要因の影響はきわめて大きいと言って差し支えない。
発明家になる道のりに立ち塞がる社会的要因はすくなくない。まず、金銭的な問題がある。両親の所得がすくないと、子供は十分な高等教育を受けることができない。
知識移転の問題もある。裕福な親は教育水準が高いことが多いので、知識を子供に伝えることができる。
また、文化や野心の問題もある。子供は両親の上昇志向や職業選択に影響されるからだ。
社会的要因の影響はほかにもさまざまな形で表れる。
たとえば近隣環境に関しては、子供が育つ雇用圏にイノベーティブな企業の社員が多いほど、大人になって発明家になる可能性が高い。
両親の職業に関しては、親がイノベーティブな産業で働いているほど、大人になって発明家になる可能性が高い。また子供は親を模倣するので、親自身が発明家の場合、その子供は同じ分野で発明家になる可能性が高い。
アメリカのデータから、社会的・家庭的要因が発明に及ぼす影響についてわかったことをまとめておこう。
まず、両親の所得と子供が発明家になる確率との間には強い相関がある。とくに、所得上位層でその傾向が強い。
この相関性は、一部は家庭環境が子供の幼少時の学力に及ぼす影響で説明できるものの、大きな原因は、所得の下位層に立ちはだかるさまざまな阻害要因だと考えられる。
このほか、文化的要因や上昇志向なども影響する。
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