「専門職エリート」が現代の「支配階級」である理由 「保守」サイドからの「アメリカ階級社会」批判
非大卒の白人が支持する共和党
事前の大方の予想に反して、2022年のアメリカ中間選挙での共和党の勝利は小幅で限定的なものになった。フタを開けてみれば共和党は下院では多数派を握ったものの、上院では民主党の優位を引き続き許す結果となった。トランプが推した候補者たちの選挙結果はお世辞にも好調とは言えず、選挙後にトランプは出馬を表明したが、2024年の大統領選挙にむけて共和党の候補者レースの先行きは、まだまだ不透明である。
この状況下でも、共和党への安定的な支持層を形成した人びとがいる。それは大卒ではない白人たちだ。白人有権者に限れば、民主党を支持するのは大卒あるいはそれ以上の学歴の人びとであり、共和党は今や非大卒の支持によって成り立っているのが実際である。どうしてこうなってしまったのか。
アメリカ政治の今と白人有権者の動向を読み解く鍵は、高学歴エリート階級と労働者階級の分裂という状況にある。翻訳刊行されたマイケル・リンドの『新しい階級闘争』が歴史的に描いてみせるのは、1970年代からアメリカで起きてきたネオリベラルな上からの改革と、それによって生じた新しい形態の階級分裂という絵図である。
リンドに言わせれば、アメリカにしてもヨーロッパにしても、ポピュリズムと呼ばれてきた政治のうねりはあくまでも結果であって、不穏な今日の社会の原因ではない。背後にある本当の原因は、かつてつくられた階級間の宥和を自分たちに有利なように破壊したテクノクラート新自由主義であり、なによりも、その主義を体現する専門職のエリートたちという現代の支配階級である。
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