日本語 語感の辞典 中村明著
コロンブスの卵ともいうべき快著である。一人の著者が成した、言葉の本質をとらえていく作業の積み重ねに圧倒される。父母を示す言葉は十指に余り、便所もトイレ、厠、はばかりなど見出し語は15もある。そして時代差、男女や長幼の差、丁寧度、状況の違い、ニュアンスの差などが丁寧に解説され、利用例も豊富だ。表現を絞り込みたいときなど極めて便利で、類語、反意語、語源、比喩の各辞典としての機能もある。
1万語と語数に制約があるためもあるが、言葉の選択には多少不満が残る。パティシエやピザパイよりもベジタリアンやキャリアのほうが利用価値は高いだろうし、美食があるのだから飽食や粗食も、英雄があるのならヒーローや女傑も欲しかった。中年男があって中年女や年増がないのはなぜか。粗茶、粗品など「粗」でくくった解説も面白そうだ。などと載っていない言葉を考えるのも楽しく、「引く」のみならず「読む」辞典としても推奨したい。(純)
岩波書店 3150円
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