つまりマリオがスマホ・ワールドへ出稼ぎ? 任天堂とDeNA、業務資本提携の勝算

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両社の分業体制についても、ユーザーが実際に手に触れ、感じる部分……すなわち、アプリ開発部分は任天堂主体で行い、サーバ側の開発、運営などはDeNAが担当する。そうした意味では、両社得意分野に分かれてガッチリとタッグを組む体制となっている。

夢は大きいが、リスクも大きい

一方で、この戦略には大きなリスクも想定される。アプリやコンテンツの品質管理は任天堂自身もかかわるだろう。ゲーム自身もスマートデバイス向けアプリと、ゲーム専用機タイトルは、明確に切り分けて設計すると話している。誰もが知る任天堂のキャラクターならば、アップルやグーグルからの推薦を受けて、アプリケーションのストアで強力なプッシュを受けられる可能性が高い。

任天堂IPならば、世界ヒットにつながるだけの耳目を集めることは容易だろう。しかしながら、目論見通りに任天堂の本業である”ゲーム専用機”のプラットフォームへと橋渡しできるかは、今回の発表だけではわからない。

たとえば、任天堂がスマートデバイスでは低い課金率に抑え、ゲーム専用機向けに送客する仕組みを上手につくればつくるほど、アップルやグーグルの目からは”プラットフォームへのタダ乗り”に見えるかもしれない。スマホアプリの流通は、プラットフォームの胸先三寸でルールが変更され、それに対して文句をいうこともできない"怖い世界"だ。

また、数億人クラスのコミュニティに成長させるモバイルアプリとなれば、サーバ側の維持管理コストが問題になる可能性がある。コミュニティ規模が大きくなるほど、アプリへの課金率は明確に下がる傾向にあり、元より射幸心を煽って課金させるビジネスモデルを潔しとしないと公言している任天堂が、どこまで課金パフォーマンスを引き出せるかも未知数だ。

こうしたことを勘案した上で、それでも「ゲーム専用機プラットフォームにはまだ多くの可能性がある」と岩田社長が語る背景には、まったく新しいゲームプラットフォームになると話す”NX”の存在が大きいのではないか。スマートデバイスのソーシャルとゲーム専用機のソーシャルをつなぐ存在として”NX”があるのだとすれば、今回の提携は、より高い成功の可能性が見えてくるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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