閉ざされた若者たちよ、"和僑"を目指せ 香港和僑会の荻野正明会長に聞く
――当初、荻野さんは香港の日本人社会には距離を置いていた、と聞きました。
日本人クラブは2年でやめた。ゴルフや俳句の同好会。親睦会なんですね。海外に出ても、日本の企業や銀行は日本人を相手に商売している。地元の社会に溶け込んでいこうとしない。日本人同士のつながりだけでいいのか。そういう思いがありました。
自慢じゃないが、僕ほど地元の人と麻雀やった人間はいないんじゃないか。僕は広東流の麻雀でも上海流の麻雀でも打てますから。
そんな私に、4~5年前、和僑会から「一度、出てこいや」と声が掛かった。あ、こういう形の会はあっていいな、と思いました。内向きの同好会ではなく、リアルにつながり助け合う。起業すれば、誰でも大変な目に遭うんですよ。そんな時に、「人のことは知らん」ではなく、真剣に相談し話し合える場が必要なことは痛感していましたから。
起業支援で編み出した4点セット
――入会の翌年に2代目会長に就任された。どういう方針で臨まれたのでしょう。
互助とはもたれ合いではない。厳しさを伴うもの。甘さは排除しよう、と言いました。その上で起業支援をきちんとやろう。それまでも起業支援を言っていたが、多分に抽象的でした。具体的には、4点セットを提起した。
1つは起業塾の立ち上げです。起業とは何かから始めて、起業の際のリスク、注意事項を教え込む。2つは起業相談室。事業プランを持ってこさせ、四方八方から分析・議論して、よりいい形のプランに練り直す。
3つ。行けるとなったら、カネです。自分はアイデアだけ、出資するカネはない、では話にならない。まず本人が出資し、足りない分は和僑会が補填しよう。そのために昨年3月、和僑キャピタルを立ち上げました。キャピタルの原資を提供したのは私ですが、持ち分の49%は和僑会に寄付しました。
4つ目は経営相談室。起業して生じる資金繰り、人事管理、不動産の手当てなどよろず相談に乗る。これだけ揃えてダメなら、それはアンタの能力の問題、ということです。
香港ほど恵まれた事業環境はありません。法人税率は最高でも16.5%だし、相続税はゼロ。株式売却益にも税金はかからない。それだけに、世界中から起業家が集まってくるから、競争は厳しい。ここで成功できれば、本物です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら