「悪質なブリーダーを排除できず」法改正の問題点 「数値規制」より「資質」で精査すべきではないか

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ほかにも、この時期に第一種動物取扱業の更新(5年ごと)で内見を受けた長野県のブリーダーは、「長野県では松本市のブリーダーによる大きな事件があったので、かなり厳しい。飼育設備の数値チェックはもちろん、繁殖を引退する時期やその後の行き先など詳しく聞かれた」と回答。内見を受けた和歌山県のブリーダー(先の回答者とは別のブリーダー)も、「かなり細かく飼育設備の数値をチェックされた」との回答でした。

すべてのブリーダーが数値規制を遵守しているかは、現状では多くの自治体で把握をしておらず、「神のみぞ知る」状態であることがわかります。

筆者は、数値規制の検討段階のときに寄せられたパブリックコメントの多さから、注目度の高い案件であると思っていたので、今年6月の段階でそれぞれの自治体が何かしらの動きをするだろうと考えていました。

しかしながら、5年ごとの第一種動物取扱業の更新時にチェックをする方針の自治体が多いのか、あまり積極的な動きは見られません。いまだ「数値規制に対応していないブリーダーがいる」「数値規制の内容自体を知らないブリーダーがいる」といった情報を得ている状況を踏まえると、この時点でチェックしないのであれば、何のために経過措置を設けたのかと疑問に思います。

自治体ごとに差があるのも気になります。

本来なら、しっかりと通達すべきですし、人員を増員してでもすべてのブリーダーの内見をするべきではないでしょうか。そして、悪質なブリーダーには改善命令を出すべきです。今年6月の時点で「数値規制に対応しなければ業を継続することはできません。遵守すべき点を確認してください」という旨の通達を行うだけでも、少なからずブリーダーに緊張感を持たせることができたはずです。

「コロナ禍だし、どうせ自治体は内見に来ない」とたかをくくっているブリーダーもいると聞きます。監視の目の甘さが悪質なブリーダーをのさばらせる1つの要因になっているのではないでしょうか。

廃業したブリーダーまでのさばる

監視の目を強化すべき理由はほかにもあります。

神奈川県で第一種動物取扱業を営むAさんは、「資金不足で飼育環境を改善できなかった“辞めブリ”が、そのまま繁殖を続けて、子犬が産まれると知り合いのブリーダー数人に譲渡して稼いでいる。譲渡された子犬は所有する雌犬がたくさん産んだことにして、血統書を発行して販売している」と話します。

さらに「繁殖犬をたくさん抱えていたブリーダーは数値規制にあった従業員を雇わず、人里離れた山奥に未登録の繁殖場を設けて、余剰の繁殖犬を移動させて繁殖を続けている。犬たちの世話をしているのは飼育に慣れている“辞めブリ”だ」とも話します。

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