「Z世代は中国に好感」世代で分かれる好感度の理由 岸田政権「嫌中世論」に頼る対中外交の危うさ

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一方、Z世代の意識は異なる。私が教えた大学の学生の例を挙げると、生まれた時から経済成長の経験がない彼らにとって、中国は物心ついた時にはアメリカを追い上げる大国となった。IT技術では日本に先行し、ゲームやマンガは質量ともに日本を超える。

おまけに大学やバイト先では、日常的に中国人留学生と触れ合う機会がある。つまり中国に自己を投影せず、他者として「等身大」で見ようという視点だ。思い入れがないから、幻想も抱かない。

中国の軍事威嚇に曝されている台湾のZ世代にも同じ傾向がある。4年前で少し古いが、経済誌「遠見」の調査では、18~29歳の53%が中国大陸での就職を希望し、前年比で10.5%増えた。理由は「(大陸のほうが)賃金など待遇が台湾よりよく、将来性がある」。

台湾では、「産まれた時から台湾は独立国家だった」と考えるミレニアル世代(2022年に26~41歳)を「天然独」(自然な独立派)と呼ぶ。中国大陸はすでに「他者」であり、思い入れはない。習近平国家主席は、3年前に発表した彼の台湾政策「習5項目」で、統一政策の1つとして「中華文化の共通アイデンティティを増進し、とくに台湾青年への工作を強化」を挙げた。Z世代やミレニアル世代を強く意識しているのがわかる。

Z世代が選挙結果を左右する

Z世代は、選挙の帰すうを決するパワーを持ち始めた。2022年11月のアメリカ中間選挙では、苦戦が予想された与党の民主党が健闘した。AP通信によると、民主党への投票者はZ世代で53%と共和党より13ポイント多かった半面、45~64歳は共和党は54%と民主に11ポイント差をつけ、65歳以上も共和党が民主党を大きく上回る。Z世代の支持が民主党を支えたのだ。

岸田内閣の支持率は、2022年11月14日の「朝日新聞」の調査で37%と、政権発足以降最低を記録した。このうち自民党支持層での内閣支持率は68%だったが、そのうちZ世代の支持率は半分以下の29%に過ぎなかった。Z世代は支持政党にかかわらず、岸田政権を見放しつつある。政権はかなり危ない。

私を含め団塊世代は、70歳代後半に差し掛かった。一方、Z世代やミレニアル世代が社会の中枢を占めるようになると、日本人全体の中国観にも変化が表れる可能性がある。

中国台頭と日本衰退という歴史的変化を心理的に受け入れられず、アジアを上から見下す「脱亜入欧」意識から脱皮できない世代が後景に引くと、「嫌中」「反中」世論も次第に変化するはずだ。岸田政権もいつまでも「嫌中」翼賛世論ばかりに頼ってはならない。

岡田 充 ジャーナリスト

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おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

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