北朝鮮「ミサイル実験」に日本が慣れきる恐ろしさ 偶発的な衝突はいつ起きるのかわからない

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専門家の中では、北朝鮮がいつ7回目の核実験に踏み切ってもおかしくないとする見方が強まっている。2021年1月に金正恩氏が発表した国防5カ年計画では、朝鮮労働党創立80年に当たる2026年までの5年間で「最強の軍事力を確保する」方針を示している。その計画達成に向けて邁進することで、米韓の妥協を引き出すという大方針にまったくブレは見られない。

ただ、北朝鮮には過去にも国際的な核合意を一方的に踏みにじってきた前歴が一度ならずあり、米韓が妥協して交渉に応じても、北朝鮮が核やミサイルを放棄する可能性は極めて低い。

北朝鮮と関係が深い中国やロシアの協力を取り付けて北朝鮮の懐柔を図ろうにも、アメリカと中ロの関係そのものが悪化の一途をたどっており、中国やロシアから北朝鮮に圧力をかけてもらったり、妥協を促してもらったりするのも難しい。

偶発的な事故が起きる可能性が高まる

アメリカにも打つ手がない中、日本はただ手をこまねいてミサイル発射におびえて、見守り続けるしかないというのが実情だ。北朝鮮のミサイル発射は失敗も多いとされ、日本海への落下を狙っていても、偶発的に日本の沿岸部に近い場所に落ちたり、破片などが国土に落ちたりする可能性は否定できない。

北朝鮮による挑発行為が頻度を増せば増すほど、そうした偶発的な事故が起きる可能性は高まり、米軍による報復から衝突に発展する可能性も否定できない。強硬措置によって自らの要求を貫こうとする姿勢はテロリストと変わらない。双方が強硬姿勢を変えない限り、現状の打開は難しいだろう。

東村 至恩 ジャーナリスト

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ひがしむら しおん / Shion Higashimura

東京都23区出身。早稲田大学卒業後、大手マスコミに入社。地方支局、東南アジア、欧米地域に駐在し、座右の銘の「毒食らわば皿まで」の精神で国際情勢を取材する。ゴルフのアベレージは80台。独身(バツイチ)

 

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