北朝鮮「ミサイル実験」に日本が慣れきる恐ろしさ 偶発的な衝突はいつ起きるのかわからない
2017年1月にトランプ大統領が就任した後もミサイル発射を続け、この年は17回実施。トランプ氏は金正恩氏を「ロケットマン」と呼んで揶揄したが、一方で直接会談することで事態の打開を図ろうと試み、2018年6月には史上初の米朝首脳会談がシンガポールで行われることになった。この年は、アメリカを交渉のテーブルに着かせるという目的を達成した北朝鮮によるミサイル発射は1回もなかった。
金正恩氏とトランプ氏は2019年2月と6月にもベトナム・ハノイと南北境界線の板門店で会ったが、核開発の中止時期や金正恩体制の保証の可否などを巡って双方の主張は平行線をたどり、直談判は失敗に終わった。
北朝鮮は2019年にミサイル発射を再開し、それまでで過去最多の年25回を実施。アピール好きなトランプ氏の豪腕による直接会談をもってしても、北朝鮮の態度を変えることは結局できなかった。
2020年は8回、2021年は6回とペースは一時落ちたかに思えたが、2022年に入ると急増し、すでに過去最多を軽々と突破し、40回近くのミサイル発射を行っている。
技術力も向上している
特筆すべきは技術力の向上だ。10月4日に北朝鮮が北部舞坪里(ムピョンリ)付近から発射した中距離弾道ミサイルとみられるミサイルは青森県付近の上空通過後、日本の東約3200キロの太平洋に落下したと推定される。防衛省は「火星(ファソン)12」と同型とみており、韓国軍は速度がマッハ17に達したと発表した。
韓国軍によると、11月18日の弾道ミサイルは高度6000キロの宇宙空間にまで達するロフテッド軌道で打ち上げられ、速度はマッハ22に達した。ロフテッドは英語のLofted(高く打ち上げれた)で、実験の飛距離を確保するために水平方向に打ち出さず、あえて上に向かって打つミサイル実験の方法だ。
10月4日の弾道ミサイルは約4600キロ飛行しており、グアムが射程圏内に入る。つまり、アメリカの国土を狙おうと思えばいつでも狙えるということをまざまざと示した形となった。11月3日と18日に日本海側に向けて発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイルはアメリカ本土をも射程に収めており、3日のミサイルについて韓国軍は新型ICBM級の「火星17」とみている。
アメリカ本土やグアムを狙う中長距離弾道ミサイルだけではなく、より命中精度が高い巡航ミサイルの開発にも余念がない。
弾道ミサイルはロケット発射のように高速で遠距離を飛ばす方式のため標的への命中精度は比較的低いが、巡航ミサイルは無人機と同様に低い高度を、設定された軌道通りに飛ぶことができるため命中精度が高く、レーダーで捉えにくいという特徴がある。
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