北朝鮮「ミサイル実験」に日本が慣れきる恐ろしさ 偶発的な衝突はいつ起きるのかわからない

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北朝鮮が10月12日に発射したと発表した「長距離戦略巡航ミサイル」2発は朝鮮半島西側の黄海上空に設定された楕円形と8の字形の軌道に沿って約2000キロ、2時間50分間にわたって飛行し、目標に命中したという。北朝鮮の発表が事実であれば、変速軌道で飛行可能な低高度ミサイルが日本列島全域を射程に収めることになり、その精度の高さから考えると、日本国民にとっては大きな脅威となる。

核兵器搭載可能な中長距離弾道ミサイルの開発でアメリカに脅威を与え、日本は命中精度の高い巡航ミサイルで射程に入れている。短距離弾道ミサイルの発射も繰り返しており、隣の韓国は速く飛ぶミサイルでいつでも狙える体制を維持しているのが、北朝鮮という国だ。

実際に核弾頭が搭載可能なのか、複数の弾頭を積む「多弾頭化」の開発はどこまで進んでいるのかなど不透明な点は多いが、これまでに6回の核実験を行い、7回目の準備も着々と進めているとされる。ここまで軍事力を強める北朝鮮が狙うのは「核保有国」としての発言力強化と、金正恩体制に対する国際社会からの保証だ。

コロナで人やモノの出入りが激減

新型コロナウイルスのパンデミックが起き、医療水準の低い北朝鮮は蔓延を防ぐために事実上の鎖国状態に自らを置いた。人やモノの出入りが激減し、低迷していた経済は一層疲弊。国連の安全保障理事会が拒否権のある常任理事国であるアメリカとロシア・中国の対立で形骸化し、制裁決議などが打ち出せない機能不全に陥る中、北朝鮮はこれ以上の制裁強化は考えにくいと捉え、なりふり構わぬ軍事力強化に踏み込んでいる。

日米韓は合同軍事訓練を実施するなどして北朝鮮の行動を押さえ込もうとしているが、逆に北朝鮮はより強硬な姿勢を示すことで譲歩しない対決姿勢を鮮明にしている。

アメリカや韓国を再び交渉の場に引き出したうえで、経済制裁の解除・緩和、体制の安定化と核保有国としての地位の確保をもくろむ北朝鮮。アメリカや韓国が譲歩姿勢を示すまでは軍事力強化をやめない構えだ。

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