高速道路のICT化がもたらす未来と実用化の障壁 NEXCO東日本・中日本が実用化を目指す最新技術

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さらに利用者への情報提供は、従来の表示板やハイウェイラジオなどに加え、すでに同社が運用しているスマートフォンアプリ「みちラジ」も活用する。みちラジは、高速道路の利用者へ、通行中の位置情報をもとに、自動で交通情報をプッシュ通知で知らせる機能などを持つ。アプリをスマホにダウンロードさえしていれば、利用者は、より迅速な情報提供を受けることができるという。

本格導入にのりかかる大きな課題

同社では、こうした先進技術を活用した道路管理センターの業務について、2025年までの実用化を目指しているが、ブース担当者によれば「なかなか進んでいない」のが現状だという。1つ目の理由として、「現在、東名高速道路などの各所でリニューアル工事を行っており、そちらが優先になっている」と語る。確かに安全な高速道路の運用のためには、老朽化した道路の補修などが最優先になるだろう。費用や人員などがリニューアル工事のほうに取られてしまい、将来的に高い効果こそ見込めるものの、ICT化のほうがなかなか進みづらくなってしまっているというのは、しかたがない面もある。

また、コスト面でも課題があるという。例えば、道路に設置するカメラ。i-MOVEMENTは、将来的に管理運営する高速道路の全線をつねに監視することを目標にしている。とくにカメラによる情報収集は、事故や災害などの事象が発生した場合、正確な状況把握をするために重要だ。だが、全線に設置するには、台数が膨大となり、相当な費用もかかることになる。

担当者によれば、「(カメラは)1kmごととか、場所によっては500mごとなど、ある程度の数を設置しないと、高速道路のすべてを監視することができない。とくに中央高速道路はカーブが多いため、先が見通せないエリアなどには、より短い区間に多くのカメラを設置する必要がある」という。

そのため、まずは限られた特定地域でのみ導入し、その後、徐々に対応区間を広げていくことが「現実的だ」という。ちなみに同社では、現在、神奈川県にある伊勢原保全・サービスセンターで、インフラ指令の試験運用を行っている。同センターは、新東名高速道路の伊勢原大山IC付近にあり、東名高速道路と交差する伊勢原ジャンクションからも近い。おそらく、実用化についても、まずは、こうした試験運用などを行っているエリア付近の高速道路から開始されるであろうことがうかがえる。

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