高速道路のICT化がもたらす未来と実用化の障壁 NEXCO東日本・中日本が実用化を目指す最新技術
開発を担当する北海道支社では、2017年に準天頂衛星からの信号を活用し、除雪車の安全な走行ルートなどを運転席のモニターへ表示することで、操作を視聴覚的に支援するシステムを開発。それをベースに前述のとおり、車両の自動運転と除雪装置操作を自動化するシステムを開発しており、2022年度内の完成を目指している。
なお、同社では、ほかにも新潟支社が中心となり、除雪トラック作業操作の自動化も開発中だ。こちらは、GPSを活用した凍結防止剤の散布と車両後部の電光表示板の操作を自動化した「集中操作器システム」を2018年に開発。さらに2019年からは、集中操作器システムに、橋梁ジョイント部などで必要となる除雪プラウ(除雪装置)の上げ下げを自動化する機能を追加する開発も実施。おなじく準天頂衛星からの信号と高精度地図情報により自車位置を特定することで、自動運転化することを目指しており、こちらも2022年度の完成を目標に掲げている。
同社ブースの担当者によれば、実際の導入には「まだまだ課題もある」という。それは、例えば、準天頂衛星からの信号が地形や状況に応じて安定しない場合があることだ。準天頂衛星みちびきは、衛星から送られる信号(電波)によって位置情報を計算する衛星測位システムだ。いわゆるアメリカが提供するGPSと仕組みはほぼ同じだが、GPS衛星は都市部や山間部ではビルや樹木などに信号が遮られて、位置情報が安定的に得られないこともある。
一方、4機体制で運用する準天頂衛星は、アジア・オセアニア地域の上空に3機があることや、GPSと一体で利用できることなどで、安定した高精度測位を可能とするという。同社担当者によれば、それでも、やはり「地形などによっては信号が届かないこともある」そうだ。おそらく、山間部を通る区間などでは、信号が遮られる場合もあるのだろう。同社では、現在、正確な自車位置の把握をつねに行え、安定的な安全運行を可能とする対策を検討中だ。
また、コスト面でも課題がある。除雪車の価格は、これも同社担当者いわく、「1台で5000万円程度」とかなり高価だ。それに加え、自動運転用装置を追加すれば、車両にかかる費用はさらに増加する。もし、システム自体が完成したとしても、いきなり多くの台数を導入することは難しいことも現状なのだそうだ。
ICT化に見る未来の高速道路
NEXCO中日本、NEXCO東日本の取り組みは、いずれも最終的には我々利用者にとって、安全性はもちろんのこと、より快適でスムーズな高速道路の走行を可能としてくれるものだ。現状でさまざまな課題はあるものの、できるだけ早期の実用化に期待したい。
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