つまり、統計上恋愛結婚に分類されていた職場結婚ですが、これは少なくとも1990年代までは見合い結婚同様「お膳立て婚」と呼べるものであったのです。
そもそも、見合い結婚と恋愛結婚という分類自体が時代遅れで、実態に即して分類するとすれば、見合いや職場という「お膳立て婚」か、当事者間の恋愛による「自力婚」という分け方にすべきだと考えています。
そして、初婚数の激減はこの「お膳立て婚」の減少に帰結します。もちろん、職場結婚でも自力婚をした人がいないとは申しませんが、1980年代までの皆婚はこのお膳立てなしには実現できていません。
本来、ネット婚には、このお膳立ての代替え機能としての期待感があったように見受けられます。が、残念ながら現状のシステムでは大きな効果をあげることは困難でしょう。
なぜなら、それらは根本的には「出会いのツール」としては奏功しますが、その先の進展は当事者任せの側面が強く、いくら出会いの前にAIマッチングがあろうとも、出会った後、現実に恋愛や結婚するかどうかを決めるのは当事者だからです。
結婚したいのにできない不本意未婚者は4割もいる
マッチングアプリは、いわば「街のナンパのデジタル版」でしかなく、3割の恋愛強者にとっては「幅広い出会いの場となる」便利なツールですが、経験に乏しい恋愛弱者にとっては「自分がモテない」ことを思い知らされるだけの残酷なツールと化します。
婚活がなかなかうまくいかない人たちがよくいう「出会いがない」という言葉がありますが、出会いがあればうまくいくというものでもありません。出会えればうまくいくというのはむしろ恋愛強者の台詞です。
ネット婚の増加は、恋愛強者にとってはよりよい相手を見つけるためには役立ちますが、それは結局「自力婚」のきっかけの内容が変わるだけであり、全体の婚姻数を底上げするのは難しいかもしれません。
一方、職場結婚の復活も難しいでしょう。現在では、職場での上司の結婚圧力は当然ながら、社員同士の恋愛もセクハラ扱いされるリスクがあるためです。
「自力婚」できる強者は放置しておけば勝手に恋愛して結婚します。自らの選択で非婚を決定している人に結婚を無理強いする必要もありませんが、結婚したいのにできない不本意未婚者が4割もいます。
求められているのは、そうしたかつてのお膳立て機能がなければ結婚に至らない層に対する仕組みです。とはいえ、後者の恋愛力をあげる方向へ向かうのは見当違いです。人には向き不向きがあります。
必要なのは、出会いの数でも恋愛力でもなく、若者たちが自信を持ち、今より幸福感を感じられ、ちょっとだけ背中を押してあげられる時代の空気のようなものが必要ではないでしょうか。結婚したい若者を支援する「令和のお膳立て」を真剣に考えるべき時かもしれません。
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