金融緩和によって、資産価格が押し上げられ金融市場のリスク選好が復活し、それらが家計・企業の支出行動を積極化させて総需要を底上げする。こうしたGDP(総需要)や雇用拡大をもたらす経路について、現在の日本銀行執行部は強く意識していると思われるが、このメカニズムがしっかり存在しているということだ。
安倍政権が昨年末の衆議院選挙で勝利をおさめ、国民の多くが金融緩和強化を中心としたアベノミクスには及第点を与えた。
米国の後塵拝する日欧、「緩和弊害論」の説得力低下へ
実際には、アベノミクスの政策の中で唯一しっかり効果がでているのが、日本銀行の金融緩和強化だろう。それでも、懐疑的な見方も依然残っている。日本銀行が掲げる世界標準の+2%のインフレ目標に対しても、原油安によって消費者物価指数が低下していることもあり、さまざまな理由を挙げた「懐疑の声」が2015年になってからよく聞かれる。
日本で聞かれるこれらの「金融緩和策への懐疑論」は、金融緩和策がもたらす潜在的な弊害の大きさを重視しているものが多い。
ただ、実際のところ、FRBは一足早く金融緩和強化に踏み出し、そして経済正常化の実現が近づき、2015年には一足早く非伝統的な金融緩和解除を見据えている。対照的に金融緩和強化が遅れた日本や欧州は、結局のところ正常化に時間がかかり、いまだに金融緩和強化を続けている。
こうした、米国と日欧の経験を踏まえると、理論の世界で想定されている「金融緩和の弊害」については、その多くが対処可能なものではないかと筆者は考えている。
マーケットの日々の変動が今後大きくなったとしても、FRBの金融政策の正常化が2015年に実現することで、日本のメディアや学会において根強い、金融緩和強化がもたらす副作用・弊害(出口に伴う混乱など)を強調する議論の説得力も、徐々に低下するかもしれない。
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