実際に、パウエル議長の会見後、複数のFOMCメンバーが利上げの到達点を引き上げる可能性があることに言及している。パウエル議長が、FOMC内部での議論を経たうえで、利上げ到達点の引き上げを示唆したのではないか。
「2023年前半にかけて5%超まで利上げが必要である」などといった、はっきりとした理屈や判断基準があるかどうかは定かではない。だが、FOMCでは「より景気抑制的な水準」までに「実質金利」をさらに上昇させることで、金融引き締めを強めることが必要との判断に至ったように筆者には見える。
確かに10月CPIの減速は朗報である。だが、当面はCPIコアが前月比(+0.3~+0.4%)で推移したとしても、それは利上げを止める理由にはならず、FRBは2023年3月まで利上げが継続する可能性が高い。せっかちな金融市場は、利上げの早期停止を期待しているかもしれないが、その可能性は低い。
FRBのインフレ抑制を最重視する姿勢は変わらず、結局、2023年3月のFOMCの時点で政策金利が5%台まで引き上げられるという状況は、大きくは変わっていないように思われる。利上げが続く時間帯は、FRBの対応への思惑で、株式市場が上下する場面が続きそうである。
アメリカの株式市場をS&P500種指数で見ると、同指数は10月半ばに年初来最安値をつけた後に、FRBの政策転換への期待などから約2週間反発した。11月FOMCをうけて反落した後は、中間選挙を挟んで上下した後、CPI下振れで大きく反発したことになる。
アメリカの本格反転は2023年半ばまでずれ込むリスク
これで、同国市場では本格的な反発が始まるだろうか。先に述べた通り、12月FOMCでの利上げ幅縮小が予想されるものの、これがFRBの引き締め姿勢が緩むことを意味しないという認識が広がりそうである。FRBの政策転換への期待だけで、株式市場が早々に本格上昇させる可能性は低いのではないか。株式市場の反転時期は、FRBの引き締め姿勢がより明確に変わる、2023年半ばまでずれ込むリスクが残っている。
というのも、今後もFRBの利上げが大幅になることは変わらないので、2023年にかけてアメリカ経済がより大きな景気後退に至る可能性が高いからである。
すでにほぼ終了した2022年7~9月期の同国の企業決算は、事前に下方修正が行われていたことから、大型ハイテク株など以外はネガティブな決算とはならなかった。だが、現時点で想定されている、10~12月期以降、2023年にかけての企業業績予想は、軽微な経済減速しか未だに織り込んでいないように思われる。利上げによる経済活動の減速が大きくなり、企業業績(予想1株当たり利益)のより厳しい下方修正が想定される。
中間選挙後は株高になりやすいとのアノマリーが意識され、今回もCPI発表後に株価の上昇局面が示しているように、今後もインフレ圧力の和らぎが好感される場面はあるだろう。だが2023年半ばまでに経済の厳しい落ち込みという現実を目の当たりにする中で、アメリカ株市場は再び安値圏で停滞する場面が続くのではないかと考えている。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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