なぜなら、今後ヘルソン市を奪還すればウクライナ軍の攻勢が一層強まることは必至だからだ。おまけにイラン供与の無人機などを使い、2022年10月初めから始めたウクライナへのインフラ攻撃も、形勢逆転への完全なゲームチェンジャーにはなっていないのが実情だ。戦局の主導権は相変わらずウクライナ側が握ったままだ。
このため何とかウクライナ側との間で停戦交渉を始めることで、反転攻勢を一時的にでも止めて、態勢立て直しの時間的余裕を得たいとプーチン氏が考えているのは間違いないところだ。
停戦交渉へ世界から同調ほしいプーチン
2022年11月15~16日にインドネシアのバリ島で開かれる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)にプーチン氏は結局欠席を決めたが、何らかのメッセージを寄せる可能性はあるという。ロシアは中国、インド、開催国のインドネシアなどから、停戦交渉を求める声を集めたいところだろう。
G20以外でも、食糧危機やエネルギー危機への懸念から、ウクライナ戦争の早期終結を求める声が多い、アフリカ、アジアなど、いわいるグローバル・サウス諸国にもロシアは同様の働き掛けをしているとみられる。
それでも、停戦交渉がすぐに実現する可能性は今のところ、高くないといえる。
アメリカでの報道によると、バイデン政権はプーチン氏との和平交渉を断固拒否しているウクライナのゼレンスキー大統領に対し、態度を和らげるよう、やんわりと要請したといわれる。アメリカ議会からウクライナに対し、あまりに外交解決に後ろ向きすぎると批判が出ることをバイデン大統領が懸念しているといわれている。
この懸念を伝えられた後に演説したゼレンスキー氏は、確かにプーチン氏との交渉拒否をロシアとの交渉開始の条件から落とした。しかし戦争犯罪の追及などその他の条件は変更しておらず、実質的にはプーチン氏との交渉拒否の姿勢を変えてはいないといわれている。
ロシアとの交渉は、ロシアが2014年のクリミア併合以降に占領したすべての領土から撤退するのが前提というゼレンスキー政権の大方針は変わっていない。米欧もこの大方針支持に変わりはない。
こうしたことから、ロシアと、ウクライナと米欧との間では、自らへの同調国を増やそうと、水面下で外交合戦が今後ヒートアップするのは必至だ。
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