JR山田線、「震災4年で復旧工事」の舞台裏 JR東日本は、「山田線方式」を広げていくのか

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営業エリアの広いJR東日本は、赤字路線を数多く抱える。山田線を上回る赤字路線だった岩泉線(岩手県)は、2010年の土砂崩れの後も復旧されないまま、2014年3月に廃止された。只見線(福島県、新潟県)は2011年7月の集中豪雨により、会津川口―只見間が現在も不通となっている。

ほかにも、大湊線(青森県)、北上線(岩手県、秋田県)なども客数の減少に苦しむ。中央線・岡谷―塩尻間(長野県)のように、路線全体では利用者が多くても特定区間の利用が少ないというケースもある。

移管できる運営母体の有無が大きな条件

JR山田線の宮古-釜石区間では3月7日から復旧工事が始まった

ところで、山田線を前例として、JR東日本が他エリアの赤字ローカル線を切り離す可能性はあるのだろうか。

この疑問に対して、冨田社長は「移管できる運営母体があるかどうかも大きな条件となる。ほかの路線では、移管先がなかなかない」と答える。つまり、山田線は三陸鉄道の存在があったからこそ移管が可能だったということである。

昨年1月、JR東日本が山田線の三陸鉄道への移管を初めて地元に提案した際、移管する理由について担当者は「三陸鉄道さんのように地域密着型の“マイレール意識”がある会社に、なかなかなりきれなかった」と語っていた。

三陸鉄道は震災直後に無料で「復興支援列車」を運行し、その後もさまざまな施策を矢継ぎ早に繰り出し、被災した住民を勇気づけた。あまちゃん効果も寄与して、「三陸復興のシンボルになる」(望月正彦社長)ことに成功した。だからこそ、JR東日本も安心して山田線を託すことができたわけだ。

冨田社長の発言は、他エリアの赤字路線はその地に三陸鉄道のような運営母体がないと引き継げないことを意味する。その点では、ほかの赤字路線は当分の間、JRが運行し続けるわけで、安泰ともいえる。地元にとっては、赤字路線を押しつけられずに済むという点で朗報だろう。

ただ、山田線がそうだったように、JRの路線が地元住民にマイレール意識を持ってもらえない状態は正常とはいえない。赤字路線といえども、地元から愛されるための不断の努力が必要だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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