クックパッド、月280円の有料会員はお得か 150万人がカネを払うネットコンテンツの本質
ただし、クックパッドが有料会員をここまで増やせたのは、一朝一夕の話ではない。根底には月間で約5000万人(のべ)という膨大なユーザーが訪れる魅力のあるサービスがある。いくら無料としてもユーザーはシビアだ。魅力がなければすぐに離れてしまう。
極端な話、レシピを載せるだけ、投稿するだけのネットサービスというアイデアなら、誰でもマネはできる。創業から10数年にわたって、サービスの中身を絶えず充実させてきたことで、「使いやすい」「見やすい」「楽しい・面白い」「繰り返し訪れたい」などの評価を、無料サービスの段階で確固たるものにしていることを見逃してはならない。栄枯盛衰が激しいネットの世界で時間をかけて実績を積み上げてきたことで、ユーザーからの信頼や知名度を高め、ブランドを浸透させてきたのだ。
コンテンツ有料化のお手本ともいえるクックパッドだが、野尻氏に言わせるとプレミアムサービス課金は「新しいことや特殊なことをしているつもりはない」という。なぜか。「元々、日本人にはレシピが載った本を買ったり、料理教室に通ったりなど、料理をつくるノウハウにおカネを払う文化がある。新たな需要ではなく、既に価値がありそれをリプレース(置き換え)している」(野尻氏)。
つまり、元々、一定の金銭的価値を確立できているコンテンツを有料化しているというわけだ。これがクックパッドのプレミアムサービスの本質ではないだろうか。
そのほかの企業の課金モデルでは?
ほかの企業で考えてみるとどうだろう。主要メディアで課金モデルに道筋を付けているのは、約312万の購読数のうち約39万(2015年1月時点)の電子版有料会員数を獲得している、日本経済新聞ぐらいだ。日経新聞には時折、いわゆる「誤報」もあるが、スクープや独自ニュースがふんだんに載る。情報量が多く、経済の分野を細かくカバーしている。同紙の報道しだいで、株価も動く。だからこそ、有料の電子版でも読む価値があると40万人近い読者が評価しているのだ。
そのほかの新聞社は、日経のはるか遠い背中を追っている状況。課金モデルの構築に頭を悩ませるのは出版社も同様で、記事系コンテンツの有料化に関しては、どのネット系メディアを見ても目立った成果は上げられていない。あるとすれば、「まぐまぐ!」や「プレタポルテby夜間飛行」のほか、ドワンゴが「ブロマガ」のサービス名で手掛ける有料メールマガジンぐらいだろうが、それでも市場は限られており、稼ぎ手は著名な筆者に集中する。これはコンテンツビジネスでありながら、有名人のファンクラブのような側面も抱えている。
むろん、優等生のクックパッドにも課題はある。日本の人口やその年齢構成を考えると、ユーザー数は遠からず頭打ちになるし、そのうち一定数を有料会員にできても限界がある。さらなる成長には海外展開の成功が不可欠だ。日本においても今は圧倒的な地位を確立しているが、移り気なユーザーの気持ちをいつまでもつかみ続けられる保証はない。常にユーザーを引きつける工夫、そのための人的、システム的な投資が欠かせないだろう。
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