上場控える日本郵政、賃上げ受け入れの是非 春闘交渉の結果は復興財源の額も左右

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そこで、日本郵便の郵便局事業を除いた郵便事業セグメントと、競合するヤマトホールディングス(HD)の収益構造を比較してみた(14年3月期ベース)。

郵便事業の売上高は1兆7776億円、人件費は1兆1413億円(営業原価内の人件費1兆1046億円と販管費内の人件費367億円を合算)で、人件費比率は64.2%となる。

一方、ヤマトHDの売上高は1兆3746億円、人件費は7043億円で、人件費比率は51.2%と両社の差はかなり大きい。営業利益も郵便事業の95億円に対し、ヤマトHDは631億円と差がついている。

もちろん、それぞれは独自の事情を抱えている。しかし、郵便事業が収益性で劣っていることは確かだ。

復興財源の額も左右

そうした中で、春闘が今の流れのまま進めば、ライバルとの人件費比率の差は縮小するどころか、場合によっては一段と拡大しかねない。

日本郵政グループ株式の売却益は、東日本大震災の復興財源となる。株式を上場した際の市場評価次第で復興財源の確保の具合も変わる。つまり、これは国民的問題でもあるのだ。労働組合が待遇改善を要求することは当然としても、経営陣がそれをいかに受け止めるかは別の問題であろう。

現在の株主である国(財務省)は、「基本的には経営判断の問題」と前置きしたうえで「株式売却収入の最大化のために、コスト削減のみならず収益向上に取り組み、企業価値を向上していただくことを期待している」と言う。

春闘妥結のヤマ場が3月19、20日とみられる中、労使はどのような決着を見いだすのだろうか。

「週刊東洋経済」2015年3月21日号<16日発売>「核心リポート03」を転載)

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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