四則計算できない高校生がいる日本の厳しい現実 支援員を奮闘させた「本当は勉強したい」気持ち

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前述の通り、「基礎学習」は国語・数学・英語の3教科で行われている。各教科のプリント内容を少し紹介してみよう。

国語ではひらがな・カタカナの正しい書き方からスタートし、主語や述語、修飾語など基本的な文法を最初に学ぶ。その後、短い文章題から慣用句、ことわざ、漢字、長い文章題と学習を重ねる構成になっている。

数学は、足し算・引き算・掛け算・割り算の四則計算から始まり、続く小数・分数は非常に丁寧に学ぶように作成されている。小学校で小数・分数の学習でつまずく子どもが多いのだが、わからないままに高校生になった生徒に今度こそ理解させようという学校の意気込みが感じられる。

また、百分率や歩合にも多くのプリントを費やしている。これは、社会人になった際、働く立場でも消費する立場でも必要不可欠の内容なので力を入れているのだろう。その後、度量衡などの単位、速さや時間と学び、最終的には方程式や図形等を含んだ文章題に取り組ませる構成になっている。

英語はアルファベットの書き方から始める

英語は、アルファベットの書き方からスタートし、曜日や月の名称、数字等々を学んでいく。さらに、中学までの学習で躓く生徒が多かったbe動詞の学習にたくさんのプリントを割いている。プリント全体の構成は、日常生活に必要な英単語と簡単な英会話に重点が置かれている印象がある。

このように、3教科のプリントは小学校から中学校までの学習内容の中で、F高校の生徒が将来、社会人となった時に必要な内容をしっかりと「学び直す」ことを意識したものとなっている。

学力が高くない生徒が多い高校、特に公立高校では、F高校のように独自のプリント教材を作成して基礎から学ばせる工夫をしている学校が全国的に増えている。筆者も同様の高校のいくつかを見ているが、その中でもF高校は先駆的な存在でもあり、各教科の内容は生徒の学力面の実態を的確に把握した上で、何度も練られて作成されたものと感じた。

この授業が学習支援員の主な活動の場である。Oさんを含めた3人の学習支援員が週3日、8時30分から17時まで勤務している。ほかに週1回勤務する支援員もいる。支援員たちは「基礎学習」の時間に教室にいて、生徒がプリントを仕上げた際に確認したり、わからない箇所を教えたりする。授業時間内にわからなかった生徒には放課後に再度丁寧に教えることもある。

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