四則計算できない高校生がいる日本の厳しい現実 支援員を奮闘させた「本当は勉強したい」気持ち

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これまで学校という場とはほとんど無関係だったOさんに、なぜ、高校生相手の仕事を選んだのか尋ねたところ、「大人の支援はたくさんやってきましたが、若い人の支援はあまり経験がなかったのでやりたいと思いました」と動機を説明してくれた。

彼の経歴を考えると、高校での学習支援員はまさに適任だと考える。なぜなら、学力低位校には、自分の家庭に、本来福祉分野が対処すべき問題を抱えている生徒が多数存在するからだ。従来の経験があるからこそ、勤務して間もなく高校生の実態に気づいている。

「学び直し」を目的に挙げる公立高校の存在

Oさんは、現在まで5年間同じ公立高校、F高校(仮名)で学習支援員を続けている。F高校は全日制普通科で学力に自信がない生徒を受け入れ、「学び直し」ができることを謳う高校の1つである。

一般にはあまり知られていないが、「学び直し」を目的に挙げる公立高校は2000年代に入ってから各地に設立されており、エンカレッジスクール、チャレンジスクール等自治体ごとに名称は異なる。F高校は同種の高校の先駆け的な存在だ。

Oさんが最初に赴任した時の校長は、非常に生徒思いで熱心な指導で知られた人物だった。学習支援員の配置には数百万単位の資金が必要だが、教育委員会と直談判して認めさせたという逸話も関係者内に残っている。「学校全体が、校長を中心にして教職員と学習支援員など外部の人間がチームを組んでいる感じでした」とOさんは当時を振り返る。

この校長の改革などにより、F高校は特色あるシステムを持っている。個々の生徒の学力の実態や問題点を発見できるように少人数制クラス編成にし、担任も原則として2人制を取っている。

国語、数学、英語の3科目は基礎から学び直せるように力を入れ、時間割の中に正規の授業として「基礎学習」(仮称)が組み込まれている。生徒の集中力を考えて、1授業時間は45分、朝一番の授業は30分に設定されている。

また、時間や行動の管理が苦手な生徒も多いので、専用のノート作成などを通じて自己管理ができるようになる練習も実践している。加えて、2019年からは通級教室の新設も進められている。

本人が持っていながら隠れている能力・才能を伸ばすための授業である「基礎学習」がF高校で最も特色ある授業である。この授業は毎日の時間割に組み込まれ、学校が用意したプリントを元に生徒が自分のペースで学ぶ自学自習の形式で実施されている。

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