新幹線・八戸、「最もみすぼらしい駅」からの大変貌 延伸開業20年、得た物あれば失った物も大きい

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そのプロセスはまちづくりにも現れている。中心市街地にどう人を集め、市民の暮らしや活動と観光をリンクさせるか模索した結果、2011年2月に「八戸ポータルミュージアム・はっち」が誕生した。市民活動の拠点機能を兼ね備える「地域観光交流施設」だ。

「はっち」の機能は好意的に受け止められた。2016年10月にはほぼ隣接して、全国でも珍しい、市が運営する書店「八戸ブックセンター」がオープンした。市が進める「本のまち八戸」の拠点だ。この施策は2024年春に北陸新幹線開業を控える福井県敦賀市にも採り入れられた。

さらに2018年7月、「八戸まちなか広場」を名乗る「マチニワ」が、「はっち」と八戸ブックセンターの間に開設された。2021年11月には、やはり中心市街地にあった八戸市美術館が改装、開館した。

これらの投資には異論もある。だが、塚原氏は「中心市街地はまちづくりのためにある」と意義を強調する。中心市街地を整備することが目的ではなく、まちづくりを進めるための手段・装置が中心市街地であり、施設群だ……というわけだ。

止まらぬ人口減少、中心商店街にも危機

「新幹線開業の成功事例」と評される八戸だが、人口流出は止まらない。今年になって、中心市街地に2店あったデパートのうち1店が閉店した。その向かい側で個性的な映画の上映を続けてきた9スクリーンの映画館も、入居するビルの再開発に伴い、2023年1月早々に閉館する。中心市街地の曲がり角に市民は危機感を強める。

残念なのは、まちとして新幹線開業20周年を振り返り、総括する機能が半ば失われていることだ。開業記念のイベントの予定はあるが、新幹線開業がもたらした変化について語り合う催しはまだ見当たらない。

20年以上にわたる街の変化をどう総括し、2031年に予定される札幌延伸にどう向き合うか。そして「開業30周年」へどう歩んでいくか。意見を交わすフォーラムを開けないかと考えている。

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櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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