16代目クラウンが伝統のFRでなくなった必然理由 電動化によって駆動方式の常識が変わってきた

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その甲斐もあって、「ユニットは同じでも操縦安定性のナチュラルさが増して、よりニュートラルステアになっています。とある方から、『これからの時代の電動車というのは、FFとかFRにこだわる必要はない』と評してもらえるほどに仕上げることができました。駆動方式にとらわれず、本当によいものをユーザーに提供したいと思っています」(前出の尾澤氏)

(写真:トヨタ自動車)

16代目クラウンを実際にドライブして、筆者もまさしくそのように感じた。振動の伝わり方にエンジンが横置きであることを感じるのは否めないが、操縦性は極めて素直で、前輪が駆動していることを感じさせない仕上がりであった。

クラウンであれば運転手付きの車であるショーファーカーとして使われることもあるだろうから、そのシチュエーションを考えると、後席に乗るといささか横方向の動きが早い気もしたのだが、クルマ自体の運動性能としては高いことには違いなく、FFベースになってもここまでできることを示すには、これぐらいがよい落としどころだったのだろうと納得した。

「DRSやE-Fourを駆使することで、操安性はもとより、クルマ全体の剛性が上がったようになります。リアが遅れることなくついてきて、横力がすぐに出ます。そこで、全車DRS付きとして、ステアリングを切ったときにクイックに応答するハンドリングを狙いました。THSというありものを使ったと言われたくなかったもので(笑)、クラウンに載せるからにはこうじゃないといけないというところを細かく煮詰めました」(前出 尾澤氏)

なお、リアモーターについて、THSのE-Fourは空冷式なので、あんまりバンバン使ってしまうと熱を持ってしまう。そこで、ここぞというところで出力を出すようにし、あまり必要ない状況では冷やすよう工夫しているが、より走りを訴求するワンモーターの「デュアルブーストハイブリッド」では出力を躊躇せず出せるよう水冷式としている。

2WDは設定せずに4WDのみとした理由

ところで、16代目クラウンが2WDを設定せず4WDのみとしたのは、クラウンとしてふさわしい乗り味を実現するには、やはり4WDがベストだと考えたから。実は開発段階では2WDの車両もあったのだが、リアの動きが落ち着かず、クラウンとして好ましいものではなかったのだという。もちろん、お伝えしたような駆動方式を感じさせないハンドリングを実現することも、2WDでは難しかったのはいうまでもない。

それもこれもポイントは“電動化”にある。電動化の技術の進化は、駆動方式に関する常識までも変えていくようだ。

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岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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