なぜYouTuberの私が「銚子電鉄」運転士になったか 自動運転では不可能な「鉄道現場」のリアル

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

銚子電鉄は、ご存知の方も多いと思いますが、「日本一のエンタメ鉄道」をコンセプトに、「まずい棒」の発売など、さまざまな面白い企画を打ち出し、経営難に立ち向かっている鉄道会社です。しかしそれも、すべては鉄道が安全に運行できているからこそ。安全の基盤となる鉄道運転をしっかり行うことで、会社としても、面白い企画とはまた別の一面を皆さんにお見せすることができるのではないか。そんなことを思いながら、免許を申請し、2022年6月に書き換えを完了しました。

私は、本書を含む出版やメディア、SNSで運転に関する情報を発信していますが、では運転の実地はどうかというと、かなりのブランクがあります。このようなチャンスは二度と訪れないかもしれません。竹本社長からも薦めてもらいましたし、やらないという選択肢はありません。2022年夏、銚子電鉄にて私の運転士としての第二のキャリアがスタートします。

いよいよ迎えた訓練の初日

電車の運転に必要な免許は「動力車操縦者運転免許」と呼ばれ、一度取得すれば更新期限などはない資格です。しかし事業者ごとに所有する車両は違いますし、線路の条件や、定められたルールも異なります。ですので、免許を持っていればすぐに運転できるというわけではなく、単独乗務を行うには、一定の習熟期間を経なければなりません。出庫点検、非常の措置、速度観測、距離目測など私が最初に運転士になる際に受けた訓練を改めて受けることになります。

そして2022年8月、いよいよ訓練の初日です。

訓練は、仲ノ町駅に併設されている車庫内で行いました。その日を迎える気分はさながら、運転士見習としてはじめて訓練についた当時と同じようでした。訓練前日は期待と緊張で眠れず(本来、睡眠は十分に取ったほうが安全上はよいのでしょうが)、そのまま朝を迎えてしまうくらいでした。

さて、訓練当日、採寸した制服に腕を通し、制帽を被ると、なんともいえない、ピリッとした緊張感が張り詰めました。余談ですが、私は、普段は血を見るのが嫌いですが、制服さえ着ていれば事故現場に一目散に駆けつけることができます。不思議なもので、それほど制服を着るということが精神的に大きな作用をもたらすのです。私が着用した制服は、黒をベースに2017年にリニューアルされ、制帽も角張ったタイプから丸いタイプのオールドスタイルになっています。

その後改めて、竹本社長をはじめ関係者の方々、乗務員の皆さんへ「運転士の訓練でお世話になります」とごあいさつにまわりました。本来よそもので、かつ異色な立場である私でも、皆さんは温かく迎えてくれ、少し緊張が解れました。

次ページ新人時代に戻ったような気分で出庫点検
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事