なぜYouTuberの私が「銚子電鉄」運転士になったか 自動運転では不可能な「鉄道現場」のリアル
訓練初日は、まず、出庫点検を行います。出庫点検とは、前日に運用を終えた車両が、翌日はじめて動かされるときのスイッチ類やハンドルの準備、またそれらに異常がないかを点検する業務です。確認項目はゆうに150を超え、試験の際には規定時間内(一般的に15分以内)ですべての項目を確認しなければなりません。まずは大きな関門です。パンタグラフを上昇させ、車両の電源を入れ、運転士の目視によってスイッチ類が正しく整備されているか、ブレーキ圧力に異常はないかなど、運転席を点検していきます。
真夏の訓練は暑さとの勝負
次に車外へ降りて、床下機器の確認です。台車や制御器、ブレーキシューの緊締、コック類と、必要項目を確認していきます。春や秋などの季節ならよいですが、冬場の出庫点検は特に大変です。列車の始発は早朝時間が多く、加えて金属製の車両は驚くほど冷え切っています。今回の私の訓練は真夏ですので、冬場の厳しさとは反対に、暑さとの勝負でありました。
汗を流しながら、でもそれを拭う暇もないぐらいに夢中になって確認項目を点検します。以前所属していた名古屋鉄道とは車両の種類が違うために、新人時代に戻ったような気分で、一心不乱に点検に取り組みました。ちなみに今回私は2両分を点検しましたが、車両の海側山側(進行方向の左右両方とも)及び両正面ともに確認をする必要があり、しかも足元には通常のアスファルトではなくバラストと呼ばれる石が敷き詰められていて、そこを革靴で駆けまわりましたので、予想以上に体力を奪われてしまいました。
車外の確認の後は車内に戻り、ドアの開閉や起動試験を行います。銚子電鉄はワンマン運転がベースなので、ドア扱いも運転士の点検項目です。私は車掌経験もありますが、ドアスイッチを取り扱うこと自体がかなり久しぶりでした。点検で閉扉をする際は、車掌スイッチ上部にあるボタンを押して扉を閉めますが、安全のために車掌スイッチ下部に手を添えていつでも開扉できるような動作があります。この動作は長年やっていなかったのですが、いざ点検となった際、私は自然にスイッチ下部に手を添えていました。体に染み付いた動作はいつまでも覚えているのだということに驚きました。
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