ドラマ「エルピス」圧倒的な重厚感を生む3つの点 熱量が伝わる脚本や、長澤まさみの熱演も話題

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ドラマ作品の出来不出来やそれがおもしろいかどうかはプロデューサーがすべて。ベースにあるのは脚本だが、それは脚本家頼みではなく、プロデューサーとともに二人三脚で開発していくものであり、その過程で仕上がりをコントロールするのも、最終的な責任を負うのもプロデューサーだ。

ドラマ制作は、通常のルーティンであれば、まず放送枠があり、その時々の時代性に合った視聴者に受けそうなテーマを設定して企画が立ち上がる。一方、そうではないパターンもある。伝えたいメッセージや作りたい物語があることが出発点にあり、それを企画として実現できる局、放送できる枠に当てはめていく。

後者の企画は、プロデューサーをはじめとする制作者のメッセージ性が強い作品であることが多い。困難な企画であるほど壁にぶちあたってもそこで折れることがなく、よりその熱量が高まりつつ突き進むことで、キャストを含めてまわりには同志が集う。そうした過程を経て世の中に放たれた作品の1つが、佐野プロデューサーと渡辺氏による渾身作である「エルピス」なのだ。

重量級キャスト陣の好演も話題

そんな本作は、放送開始とともにドラマファンが反応した。TwitterなどSNSでは実力派と呼ばれる旬なキャスト陣の好演がすぐに話題になった。まさに本作の作品力を底上げしているのは、シリアスサスペンスに必須の要素である演技力の部分だ。リアリティの部分で視聴者の共感を得る役者の芝居は、「エルピス」の重厚な作りを支える3つ目のポイントともいえる。

エルピス
エルピス第3話(写真提供:関西テレビ)

主人公のアナウンサー役の長澤まさみと、スキャンダルで彼女と別れた元恋人役の鈴木亮平の落ち着いた芝居は、見るものを安心させる抜群の安定感がある。

さらに、冤罪の話を持ち込むヘアメイク役であり、その人格に裏がありそうな怪しさをにじませる三浦透子、若手ディレクターの薄っぺらい人間性を見事に体現する眞栄田郷敦は、前述の安定感とすごみのある2人とは対照的な不安定な存在感を放ち、作品に重厚感を与えている。

とくに長澤まさみはベテラン女優の域に達した貫禄の芝居を見せている。序盤で繰り返される吐きそうになってえずくシーンは、リアルすぎるとSNSで話題になった。誰もが経験したことがあるであろうその感覚をよみがえらせるほど繊細な表現で、視聴者をストーリーに引き込む大きな役割を担っている。

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