フランスの「知の巨人」が警告する日本の安全保障 核保有の是非、米国・中国との関係をどう考えるか
トッド氏:ロシアを過小評価することはできない。私見だが、プーチン政権が崩壊すると仮定するのは完全な幻想だ。ロシアが何らかの形で敗北することは想像できるかもしれないが、ロシアがまた何らかの形で勝利する準備もしておかなければならない。西側は、我々が思っているよりずっと脆弱だということはあり得る。なぜなら、大きな危機に直面しているのは米国と西側だからだ。あらゆる可能性を考慮しなければならない。
今、明らかに第三次世界大戦のような状況に突入しつつある中で、一歩立ち止まり、一歩下がって考え始めることだ。ロシアによるウクライナ侵攻は、あまりにも感情的な戦争だ。恐ろしいことだ。日本は、欧州のように巻き込まれないようにすることだ。米国は今、周囲を台湾問題に引き込んでいっている。欧州をロシア経済から切り離したのと同じように、日本が、中国経済から切り離されるようにアメリカはまもなく求めてくるだろう。あるいはすでに求めているかもしれない。これは日本への警告だ。
我々(欧州)はこの米国の政策により破壊されている。同じような政策により、日本は自らを滅ぼさないでほしい。もちろん中国との問題はあるだろうが、中国と日本経済の間には大きな相互依存関係がある。だから中国と話し合うべきだ。もちろん軍備増強は必要だ。私は現実主義者だ。戦争をしないためにも軍備増強をしなければならない。そして戦争以前に、中国と共通の問題、つまり人口問題に対する5つの解決策を話し合っておく必要がある。一歩下がって考え、感情的な態度から抜け出すべきだ。
「アメリカに頼るな」と言うが、頼らざるをえない
松山キャスター:トッド氏の話は、日本の安全保障について米国目線だけではなく別の角度からも見る必要があるということだと思うが。
木村氏:トッド氏に言いたい。中国の言葉に「遠交近攻」という言葉がある。遠くと交わり、近くを攻める。つまり近くの国とは理屈抜きに、好き嫌い抜きに対立するのが当たり前で、そのためには遠くの勢力と結んでおかないといけない。まさにそれを日本は実行している。別に中国とことを構えようという気はないが、遠い国のアメリカと結んでおくということは大事だ。トッド氏は「アメリカに頼るな」と言うが、頼らざるをえない。これは、中国人が言う大原則から見てもそうだと、僕は思う。