フランスの「知の巨人」が警告する日本の安全保障 核保有の是非、米国・中国との関係をどう考えるか
以下、番組での主なやりとり。
梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):エマニュエル・トッドさんは世界をどう見ているのか。「中国は世界の覇者になれない」という、その根拠は。
エマニュエル・トッド氏(歴史人口学者):中国の出生率は著しく低く、すぐに労働年齢人口も減っていく。出生率は1.3とますます低下している。中国が支配的な覇権国家になることは考えにくい。ほとんど不可能だと予測する。それは人口動態を見れば明らかだ。私は何も特別なことを言っているわけではない。
ロシアが安定性を取り戻した
梅津キャスター:トッド氏は「プーチン体制が瓦解することはない」とも予測している。
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長、解説委員):ウクライナが反転攻勢に出てロシアから奪われた領域を戻す動きが続いている。プーチン体制は今後も揺らぐことはないと見るのはなぜか。
トッド氏:プーチンが率いるようになったロシアがしっかりとした安定性を取り戻したことは明らかだ。(『ソ連崩壊』予測の根拠となった)乳児死亡率は下がった。今やロシアの乳児死亡率は米国よりも低い。自殺率も殺人率も低くなっている。ロシア社会が安定を取り戻し、国民が全体的にプーチンに満足している。
ロシアは経済的な柔軟性も持ち合わせている。(2014年に)ロシアがクリミアに侵攻して西側からの経済制裁を受けるようになったが、明白なのは、ロシア経済は非常に柔軟であるということだ。
松山キャスター:トッド氏によると、ロシアは社会的、経済的にまだまだ強靱だということのようだが。
木村太郎氏(ジャーナリスト):瓦解しないという話ではなく、瓦解させなければならないという議論にしなければいけない。それはなぜか。1940年代、ヒトラーの下のドイツはインフレを克服し、国力を回復し、軍隊も強くなってきた。国民はみなその強いドイツを支持していた。そのドイツはポーランド国内のドイツ国民を救うためだとしてポーランドに侵入した。プーチンは今回のウクライナでまったく同じことをやっている。そのプーチンを存続させるということは、ヒトラーを存続させるのと同じことになる。瓦解するか、しないかではなく、瓦解させなければいけない。そういう議論だ。