国民がマイナンバーカードを持つことを忌避したくなる、国の「感じの悪さ」について考えておこう。原因は2つある。
1つは個人データを何に使うつもりなのか、政府が正直に説明しないことだ。国民にメリットがあるという立論で、将来も含めて何に使いたいのかを堂々と説明したらいい。後述のように「庶民」はその受益者である。
もう1つは、個人情報が漏れたりデータの扱いに公務員の不正があったりした場合の補償と罰則が明確でないことだ。
個人の金融資産の明細や金融口座の取引データ、さらには病気の履歴まで、個人データが漏洩したり悪用されたりした場合、例えば「500円のクオカード1枚で、ゴメンナサイ!」では誰も納得するまい。大手企業などが引き起こす顧客情報の漏れとは個人情報のレベルが違う。
一方、こうした条件を裁判で争うのはバカバカしいくらい時間がかかるし、裁判官の多くは行政寄りの判断をする傾向があって、国民からあまり期待できる存在には見えない。政府の管理にミスがあればどう落とし前をつけるのか、法律にしっかり書き込んでもらわないと安心できない。
個人のデータがどのように使われているのか、自分で参照できる仕組みがあるとより安心だ。もちろん、手軽にできすぎてしまうと犯罪などに使われる可能性があるので、それなりの手続きはあっていいが、例えば、自分のデータに誤りがないことを確認できるようにしたい。
個人にとっての「具体的なメリット」を作れ
加えて、マイナンバーカードの普及を図るには、個人にとってのメリットがないといかにもつまらない。この点はもっと強調されていい。マイナンバーカードを巡る行政全般にあって、この点に対する配慮が足りなすぎる。「官僚はビジネス経験がないからだ」と言えば半分は納得できるが、それで片付けるにはあまりにお粗末だ。
例えば、せめて、自分の資産管理にマイナンバーで紐付けされたデータを使えたり、相続の際の資産探しに使えたりする程度のメリットが国民個人の側にあっていい。
また、金融口座の情報や給与等の振り込み情報が紐付けされていて、医療費もわかるとなれば、簡易版の確定申告書作成のサービスくらいはあってもいいのではないか。
普通のサラリーマンのレベルなら、マイナンバーを利用して行政のサービスとして作成された簡易申告書に、個人が必要なデータを書き加えて申告を完了できるというくらいの便利さがあっていい。税理士業界は反発するかもしれないが、新しい時代の専門家は、もっと高度な業務やコンサルティングに活路を見出すべきだろう。
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