さて、筆者はさる媒体から、「健康保険証のマイナンバーカード化による経済効果を教えてほしい」という取材依頼があって考え込んでしまった。何でもかんでも「経済効果は?」という問題意識はいかがかと思うが、このとき「大きな経済効果の可能性」に気がついた。
卑近な経済効果としては、とりあえず、マイナンバーカードを保険証や免許証として読むカードリーダーのメーカーやデータを管理する仕組みを作るシステム会社は儲かるはずだ。すでに官庁に食い込んでいる、いわゆる「ITゼネコン」と呼ばれるような企業たちだ。これは毎度のことで、今回もなくならないだろうが、あまり興味のわく話ではない。
大金持ちの資金の流れこそ、ガラス張りにすべきだ
さて、将来的には「徴税の効率化と公平化」こそマイナンバーカードの最大の経済効果だ。すべての金融口座にマイナンバーが紐付くと脱税やマネーロンダリングが現状よりも難しくなり、個人の活動はより詳細に国に把握されるようになる。
そう聞くと、「国にプライバシーを把握されるようで気持ちが悪い」と思うかもしれないが、多くの場合意識過剰だ。
もともと個人の情報は国が調べようと思うと簡単に調べられる。すでに各種の犯罪の容疑者が、簡単に監視カメラで捕まっているではないか。数年前には、時の政権に批判的だった元高級官僚の「出会い系バー通い」が取り沙汰されたこともある。この元官僚に特別に肩入れするつもりは筆者にはないが、政府はここまでやるのか(ついでに「何と下品な」とも、もちろん政府のほうが、である)と思った。
まして、サラリーマンの場合、収入はすっかりガラス張りで、もともとごまかしのしようもない。国にお金の流れをつかまれることで、追加的に失うものなどほとんどない。お金持ちの資金の流れも、同じくらいガラス張りにしたらいいではないか。
金融口座の動きを完全に把握されることの影響が大きいのは、1つには大金持ちであり、もう1つには地下経済とまで言わぬまでもお金の動きを十分把握されていない、いくらかダークなビジネスにかかわる人たちだ。
ここで「庶民」の定義を考えておくとして、収入の半分以上が給与所得である会社員は、経済力の上下に多少の差はあっても徴税の対称として概ね同質の「庶民」と見ていいだろう。また、年間の売り上げが2000万円くらいまでのフリーランスはサラリーマンよりも節税の工夫の余地があるが、いわゆる富裕層と比較すると「可愛いもの」の範疇であり、やはり「庶民」だろう。
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