大人が「記憶力悪化は歳のせい」と勘違いする理由 子どもと大人では覚えるメカニズムが全然違う

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大人脳で効率的に記憶力を向上するためには、記憶を司る部分だけでなく、思考と理解を巻き込みながら、目や口や耳などの脳番地を一気に働かせることが重要なのです。

『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)
(イラスト:うのき)

子どもは覚えてから理解、大人は逆

それでは、学生脳と大人脳とではどのようにシステムが異なるのでしょうか。子どもの頃は、最初に聞いて覚え、覚えてから理解するという順番で脳を働かせています。聴覚から記憶へとつながる脳のルートがいちばん強くて使いやすいのが子どもの脳の特性です。

しかし、年齢を重ねてさまざまな経験や情報に触れるなかで、他のルートも開通していき、この脳ルートは徐々に使われなくなっていきます。そして大人になると、反対に、理解してから覚えるシステムへと変わっていくのです。

「無意味記憶」といいますが、子どもは、知らない言葉でも記憶することができます。たとえば、読み聞かせの絵本で初めて聞く「親孝行」という言葉を、音の響きでそのまま覚えられます。そして、だいぶ時間が経ってから「おやこうこうってどういう意味?」などと聞いて親を驚かせます。語彙力の少ない子どもの脳細胞にとっては、言葉の新しい響きさえも新鮮で興味の対象となり、意味のわからない言葉でもスッと受け入れられます。

一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方
『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

これが大人になると、子どもの頃より脳の思考・理解する力が発達しているので、「忖度? それってどういう意味だろう?」と、記憶するよりも前に疑問が湧いてきて、意味を理解してから記憶するという「意味記憶」が優勢となります。

大人の場合、単純に「記憶しよう」と思っても、脳は思ったように働いてくれません。「忖度という言葉があるんだ。そうか、僕も上司に忖度して意見を呑み込むことがあるな」と自分だったらどう使えるか理解してはじめて、記憶できるという仕組みになっています。

大人が何かを覚えたいと思ったときは、付箋やマーカーをひいて「覚えよう」とするよりも「理解しよう」と頭を働かせるのが正解。つまり、意識的に脳番地の「思考」と「理解」をきちんと動かすということなのです。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。著書に、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『一生頭がよくなり続けるもっとすごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』(きずな出版)など多数。

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