"炎上王"イーロン・マスクという「地政学リスク」 ウクライナや台湾の「割譲」を触れ回った

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自身の発言やツイートがあちこちで物議を醸しているイーロン・マスク氏(写真:Jordan Vonderhaar/Bloomberg)

イーロン・マスク氏はこの4週間で、ロシアとの和平案を提示してウクライナ政府を激怒させた。イランでは反体制派に衛星インターネット通信を提供するとしたツイートが、当局の反体制派あぶり出しに利用される問題を引き起こしている。さらに最近の新聞インタビューでは、台湾の支配権を部分的に与えれば中国をなだめられると発言。台湾政府関係者が発言の撤回を要求する事態となっている。

スターリンクとツイッターがもたらす攪乱能力

このところ国際政治の舞台で新たな問題児として浮上してきているのがマスク氏だ。世界情勢に口を挟みたがる富豪の経営者は多いが、影響力とトラブルを引き起こす能力においてマスク氏の右に出るものはいない。彼は自重を求める忠告を受けた後でさえ、しばしば問題に首を突っ込み、すでに数多くの混乱を引き起こしている。

マスク氏の富の大部分は電気自動車会社テスラによるものだが、その影響力の大部分はロケット会社スペースXが運営する衛星通信ネットワーク「スターリンク」に由来する。スターリンクは紛争地域や地政学的な火種を抱える地域にインターネットサービスを送り届けることができるもので、今ではウクライナ軍に不可欠のツールとなっている。

ツイッターの買収が約束どおり完了したことで、マスク氏の影響力はさらに増すことになりそうだ。マスク氏は自らを「言論の自由の絶対主義者」と称しているため、ツイッターのコンテンツモデレーション(不適切な投稿の監視・取り締まり)を緩めることが予想される。

マスク氏に批判的な人々は多いが、そうした人々はマスク氏の意見とビジネス上の利益を切り離すのは難しいと懸念する。中でも問題になるとみられているのが、中国依存度を深めるテスラだ。

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