"炎上王"イーロン・マスクという「地政学リスク」 ウクライナや台湾の「割譲」を触れ回った

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地政学シンクタンク、ジャーマン・マーシャル財団のディレクターで、元バラク・オバマ大統領の顧問だったカレン・コーンブルー氏は「テクノロジーは今や地政学の中心にある」と語る。「それは興味深く、混沌としており、その真ん中にはイーロン・マスクがいる」。

クレムリンに味方する衝撃発言

マスク氏の存在が福音となったケースもいくつかはある。今年2月のウクライナ侵攻を受けてマスク氏はウクライナにスターリンクのインターネットアクセスを提供。ハードウェアとサービスの費用を少なくとも部分的に負担した。これによりウクライナの市民と兵士は、ロシアとの紛争の中で死活的に重要な通信手段を確保することができた。

しかし、マスク氏のメッセージはトラブルの原因ともなっている。10月中旬、マスク氏はツイッターの投稿で、スターリンクをウクライナに「いつまでも」無償提供することはできないと述べた後、発言を唐突に翻した。

マスク氏は9月末、コロラド州アスペンで開催された「ザ・ウィークエンド」と呼ばれる非公式イベントに出席。グーグルの元CEO(最高経営責任者)で政府顧問を務めるエリック・シュミット氏が主催に関わった同イベントは、ナンシー・ペロシ下院議長、アル・ゴア元副大統領、ジョセフ・ダンフォード元統合参謀本部議長ら、アメリカの財界と政界のリーダーが一堂に会するものとなった。

昼食時、ゴルフ場に設置されたテントの中でマスク氏は壇上に上がり、億万長者の実業家デビッド・ルーベンスタイン氏とトークを繰り広げたと、参加者の2人が匿名を条件に語った。

その最後に飛び出したマスク氏の言葉に、参加者の多くは衝撃を受けたという。マスク氏はウクライナにおける戦争の和平案として、ロシアへのウクライナ割譲を提案したからだ。クレムリン(ロシア大統領府)と足並みをそろえるかのような発言だった。

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