"炎上王"イーロン・マスクという「地政学リスク」 ウクライナや台湾の「割譲」を触れ回った
出席者によると、イベント参加者の多くはマスク氏の和平案に激怒した。その翌日、ジョー・バイデン大統領の国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバン氏が同イベントでビデオトークを行うと、質問者からマスク氏の和平案に関する問題提起があった。
国家安全保障会議(NSC)の広報担当者によると、サリバン氏はマスク氏の発言についてコメントしなかった。それでもマスク氏は10日後、ツイッターで自分の和平案を披露。クレムリンはマスク氏の案を公に支持した。
ウクライナ軍が窮地に陥る可能性も
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とその側近はマスク氏の和平案を激しく非難したが、マスク氏の政治的立場が変化すればゼレンスキー氏らは窮地に追い込まれることになる。スターリンク端末は、ウクライナ軍に欠かせない通信手段となっているためだ。
ニューヨーク・タイムズはマスク氏に繰り返しコメントを求めたものの、回答は得られなかった。
9月中旬、それまでロシアに占領されていた南部地域にウクライナ軍が進軍すると、前線付近の一部地域でスターリンクにアクセスできなくなったと4人の消息筋は述べている。そのうちの2人は、マスク氏が特定の地域でのみスターリンクを利用できるよう「ジオフェンス」を設定したためだと語った。衛星システムが使えなくなった理由は明らかになっておらず、ウクライナのほかの場所では問題なく機能していたとする報告が上がっている。
マスク氏は10月、ウクライナにスターリンクを無償提供し続ける経済的な余裕はないとツイートし、ウクライナにさらなる不安を与えた。マスク氏は自身が費用を肩代わりしているかのように見せかけているが、ニューヨーク・タイムズが確認した支出関連文書によると、実際にはアメリカ、イギリス、ポーランドの政府がスペースXに対し、使用料の少なくとも一部を支払っている。