57歳で急逝「青山真治監督」ゆかりの人が語る素顔 とよた真帆、宮崎あおいなどが素顔を明かす

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とよた:(『月の砂漠』撮影の雰囲気について)青山組はシリアスでしたね。ピーンと張り詰めているというか。そういう感じがありました。

とよた:(企画について)ちょっとしたアイデアはたくさんあって。それを軽く言葉にはしない人でした。パソコンの中には企画書がたくさんあって。亡くなった後に、スタッフが今、それを形にしているところなんですが。いろいろ考えていたんだなと思って。だからわたしの知らない作品もありましたし、これは前に言っていたやつだな、というものもありました。

とよた:(自分が観察されていて。それが映画に使われたことは?)それについてはさわやかにハイ、と言いたいですね。結婚後からの作品は、これをこういう風に使った、ということが結構あって。世間ではそれまで青山は女性をあまり描いていなくて、『月の砂漠』で女性をやっと描いたと言われているそうですが、『サッド ヴァケイション』でもそういうことがありました。

わたしの姉、わたしの母、わたしとの関係性、いろんなことの断片を膨らませて、そのシーンに投影するとか。その役のスパイスに投影するとか。そういうことをなさっていたみたいですね。だからわたしは後で作品を観てガーンと気付くというか。心の中でチクショーと思うわけですが(笑)。

さらに「青山真治と結婚するということは、たとえ飲んだくれていたとしても何でも、彼のやることを面白がらないと。でないと青山との結婚生活はできなかった」と語るとよたは、その後も青山監督とのエピソードを笑いを交えながら明かす。終始、青山監督への慈愛に満ちた様子で語る彼女の姿に、聞き手を務めたPFFの荒木啓子ディレクターも思わず「青山さんはしあわせですね……」としみじみと語るほどに、多幸感あふれる時間となった。

青山監督作品の上映も

青山真治/1964年7月13日、福岡県北九州市門司生まれ。立教大学文学部に入学。自主制作映画を撮り始める。その後はフリーの助監督としてダニエル・シュミット、フリドリック・フリドリクソン、黒沢清らの作品に参加。1995年のVシネマ「教科書にないッ!」で監督デビューを果たし、翌年の『Helpless』で映画監督デビュー。同作は海外映画祭などでも広く上映。2000年には3時間半を超える大作『EUREKA ユリイカ』を発表。カンヌ映画祭に出品され、国際批評家連盟賞をはじめ2つの賞を受賞。小説版は三島由紀夫賞を受賞している。2011年には『東京公園』でロカルノ映画祭金豹賞を獲得した。その他の代表作として『月の砂漠』『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』『サッド ヴァケイション』『共喰い』などがある(撮影:池田正之)

なお「第44 回ぴあフィルムフェスティバル」は東京に続き、11月19日~27日にかけて京都文化博物館でも開催予定。青山真治監督の作品は11月23日に『私立探偵濱マイク 名前のない森』の映画版ロングバージョンと、『赤ずきん』『路地へ 中上健次が残したフィルム』を上映。

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