元官僚46歳「夏に稼ぐスキー場」を生んだ逆転人生 「100のテレビ番組で紹介」仕掛け人の大胆発想

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一方、当時の白馬では、徐々に海外からのスキーヤーの数が増え始めていたものの、日本人の来場者は年々減っていました。岩岳にあった民宿に泊まらせてもらったときも、宿のおばあちゃんが「最近どんどん街に元気がなくなる」と嘆いていました。

もしかしたら、遠く海外からやってくる人には見えている「宝物」が、身近にいるはずの日本人には気づかれなくなってしまったのではないか。このまま放っておけば、その宝物は老朽化し、やがて消え去ってしまうのではないか。圧倒的なポテンシャルを持つ白馬の魅力を国内外のより多くの人に知ってもらいたい。中央官庁やコンサルで培った経験、スキルを活用できる場も多いはず。

そう考えると居てもたってもいられず、7年近いコンサル生活に終止符を打ち、2014年に、地縁も血縁もなかった白馬に移住しました。スキー場運営会社である日本スキー場開発に入社し、白馬でスキー場を運営していた子会社で働き始めます。

スキー場が置かれていた厳しい現実

白馬に来て早々、スキー場業界の置かれていた厳しい現状を目の当たりにします。そもそも国内スキー市場は、1990年代のピークから比べると参加率は3分の1程度に落ち込み、1年間の平均参加回数も約6回から約4回に減少していました。

加えて、少子高齢化が進むなかで、スキー参加率が高い10代から40代の若年・壮年層の人口は他の世代よりも大きく減少することが見込まれています。市場縮小が続く危険性が極めて高い状況なのです。

一方、事業を営むうえで必須となるリフトやレストハウスなど施設の老朽化は年々進んでいます。すべてのリフトの平均年齢も35歳を超え、そろそろ更新に向けた投資が不可避なステージです。しかし、スキー場の稼ぎと投資の大きさを考えると、簡単な話ではありません。

さらには、そんな事業環境に追い打ちをかけるように、小雪、新型コロナの流行によるインバウンドの消滅など、事業環境の厳しさは年々増す一方です。

本連載では、こうしたキャリアを歩んできた私が、逆境をどのように跳ねのけ、「夏に稼ぐスキー場」として白馬岩岳の復活に貢献したのか、何回かに分けてご説明させていただきたいと思います。

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