わが国で、重症者・死亡者のコロナ感染の見落としは考えにくい。共同通信が超過死亡の原因として、真っ先に「医療逼迫の影響で医療機関にアクセスできず新型コロナ以外の疾患で亡くなった」ことを挙げているが、これも考えにくい。
医療ガバナンス研究所が、厚労省が発表しているデータを基に、各病院の今年8月3日現在の患者受け入れ数をまとめたものを表1に示す。
即応病床に占める入院患者数の割合は、慶應義塾大学126%、順天堂大学125%、日本大学123%のように100%を超えるところもあるが、我々が調査した26病院中19病院は、第7波真っただ中の8月3日でも空床を抱えていた。兵庫医科大学の稼動率は36%、国立国際医療研究センターの稼動率は42%にすぎない。病床が逼迫していた訳ではない。
都立のコロナ基幹病院に勤務する内科医は、今夏の状況について、「入院しているコロナ感染者などはほとんど中等症止まりで軽症も多かった」という。これは、オミクロン株が重症化しにくいからだ。局所的に病床が逼迫した病院はあっただろうが、医療逼迫が死者を増やすレベルでなかったのは明らかだ。
高齢者の持病が悪化したか
もっとも考えられる原因は、長期の自粛により持病を悪化させた高齢者が多かったことだろう。日本経済新聞は10月16日の記事「コロナ以外の死因大幅増 1~3月、高齢者の在宅死影響か」の中で、「死因別では、最も増加したのは心不全など『循環器系の疾患』で約1万人(10%)増えており、「老衰」も約8000人(21%)増えた」と論じているが、遅きに失したと言わざるを得ない。
特記すべきは、3月10日の『ランセット』や『ネイチャー』の論文、記事での日本に関する情報を、国内のマスコミは、一紙も報じなかったことだ。今回のように、厚労省や国立感染症研究所が発表すれば、大々的に取り上げるが、世界的学術誌の記事は「無視」する。これでは国民は堪らない。コロナ対策での過剰な自粛が国民の命を奪っているのだから、新しい事実が判明すれば、早急に対応を変えねばならないが、マスコミが報じないのだから、国民は自粛を続けるしかない。
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