日本人は「超過死亡増加」の深刻さをわかってない 科学的に合理的でないコロナ対策を続けていいのか

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方向転換のチャンスは、他にもあった。昨年12月、スポーツ庁は全国の小学5年生と中学2年生を対象とした2021年度の全国体力テストで、男女とも全8種目の合計点の平均が調査開始以来最低だったと発表した。小中学生の体力がこれだけ落ちるのだから、高齢者の健康が害されるのもむべなるかなだ。

さらに、今年7月29日、厚労省は「簡易生命表」を発表し、2021年の日本人の平均寿命は女性87.57歳、男性81.47歳で、いずれも過去最高だった前年を下回ったことを明かした。平均寿命が前年割れするのは、東日本大震災があった2011年以来だ。この事実も、ワシントン大学の研究結果と一致する。

2020年1月から2021年12月までの超過死亡
図2

図2は、医療ガバナンス研究所の山下えりかが、2015~2019年の死亡者数の平均と、コロナ流行後の死者数の差を比較したものだ。コロナ流行以降、ほぼ右肩上がりで増加していることがわかる。長期にわたる自粛が、高齢者の健康を蝕み続けているのだろう。コロナ対策での緊急事態宣言や蔓延防止措置は、高齢化した我が国では諸刃の剣になることを認識すべきだ。

避難した高齢者の死亡率は2.68倍に

実は、このことを世界で最初に指摘したのは、わが国の医師・研究者たちだ。2013年4月、東京大学の研究チームはアメリカ『プロスワン』に、相双地区の介護施設の入居者を対象に避難と死亡の関係を調査した結果を発表した。この研究では、避難した高齢者の死亡率は、被災しなかった人と比較して2.68倍も高かった。

このチームは、さらに研究を進め、原発事故後、南相馬市立総合病院を受診する脳卒中の患者が62%増加したことを、2015年11月にアメリカ『老年医学会誌』に報告している。さらに、2017年8月には、別の東京大学の研究チームが、相馬市と南相馬市の原発事故後の総死亡リスクが、それ以前と比べて男性で2.6倍、女性で2.5倍増加していたことを英『疫学・公共健康誌』で発表している。

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