「舞いあがれ!」に東大阪出身者が"普通"を望む訳 「普通の東大阪」を描く「普通の朝ドラ」を

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「さぁ、つっこんでやろう!」と、前作・前々作からの流れで、虎視眈々とテレビモニタに向かった視聴者は、淡々とまっすぐに成長していく舞(浅田芭路)の姿に、いい意味での肩透かしを食らったはずだ。

脚本は桑原亮子。2020年初頭にNHKで放送された『心の傷を癒すということ』でいくつかの賞を受賞した新進気鋭の脚本家。阪神・淡路大震災に臨んだ在日コリアンの精神科医の姿を捉えた脚本は、世間的に大きな話題を集めたとは言えないものの、私含むドラマファンをうならせるウェルメイドなものだった。

そう、ケレン味のないウェルメイドな朝ドラ――『舞いあがれ!』に寄せられるニーズは、そこにあると思うのだ。

スムーズな離陸への2つ目の成功理由

とは言え、古くさく鈍くさい朝ドラかと言われると、そうはなっていない。スムーズな離陸への2つ目の成功理由として挙げたいのは、ストーリーの密度の高さである。

放送開始からたった3週間・計15回で10年経過。東大阪から五島列島をはさんで東大阪に舞い戻り、ヒロインは小学3年生から一気に大学生になってしまった。見方によっては、かなりせわしない展開である。

私などは、五島列島の圧倒的な自然の中で、高校生にまで成長したヒロインを見たいと思っていたのだが(荒井由実『瞳を閉じて』で有名な奈留高校に進学してほしかった)、あっと驚くほどのスピードで「浪速大学」に入学。このあたりは、さらにせわしなかった『カムカムエヴリバディ』の成功体験が活かされているはずだ。

あと、役者陣の安定感も、成功要因として挙げられよう。ほぼ善人しか出てこない脚本を、腕のある役者陣がしっかりと対応している。現時点でのMVPは高畑淳子。ただ、それ以外にも失点している俳優がいない(今後の展開で、ヒロインの先輩役を演じる吉谷彩子がブレイクすると思う)。

以上のように、ケレン味なく、かつ密度の高い脚本と、それに応えた役者陣によって、スムーズな離陸に成功したと見るのだが、加えて、個人的に、強く惹き付けられるのは、東大阪を舞台としている点である。

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