「舞いあがれ!」に東大阪出身者が"普通"を望む訳 「普通の東大阪」を描く「普通の朝ドラ」を

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ここから私事になるが、私は東大阪市の出身である。なので、『舞いあがれ!』の採点に、郷土愛が加点していることは、正直否めないところだ。朝ドラファンとして、画面の中で、故郷の懐かしい光景が再現するという体験。率直に言えば、とてもうれしい。

町工場が鼻を突き合わせて立ち並ぶ路地、高架の上を走る近鉄線(奈良線・大阪線)、お好み焼き屋、謎な風体の古本屋店主、そして生駒山上遊園地――懐かしくって仕方がない。

なぜドラマや映画にほとんど取り上げられない?

加えて、こうも思うのだ――「東大阪が、なぜこれまでドラマや映画で、ほとんど取り上げられなかったのだろう?」と。そして、地域ブランディングにおける、わが故郷の最大の欠陥に気付くのである。

「東大阪市」という地名――。

1967年に、布施市・河内市・枚岡(ひらおか)市の三市合併で「東大阪市」となる。問題は、この無個性な、のっぺらぼうのネーミングだ。歴史的由来のある地名ではなく、単に「大阪市の東にある市」という、記号的な意味しか持たない没個性なネーミングは、あまりに惜しい。

ブランド名はブランディングの根幹。ということは、地域への好感を醸成し、経済効果を高める地域ブランディングについて、わが故郷は、歴史臭の強い「堺」や「八尾」(やお)に比べて、かなりの後方からスタートしたことになる。

それでも、ラグビー(花園ラグビー場がある)や町工場の存在が知られることで、市としての知名度がアップしてきた。そして、ようやっと朝ドラに取り上げられることとなった。

そんな中、『舞いあがれ!』に期待したいのは、「普通の東大阪」を描くことだ。

これまでの朝ドラは、当然だが、大阪市内を舞台としたものが多かった。その典型例は、天下茶屋(市内西成区)や新世界(同浪速区)を舞台とした『ふたりっ子』(1996~1997年)だろう。

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